林檎に牙を:全5種類
Noisy Kitchen/master 朔花(サクカ)


*創作小説(R15.18含)NL/GL/BL

性描写・同性愛・暴力描写等を含む文章を取り扱っています。
R表記作品は18歳未満の方の閲覧を固く禁止。
バナーを除く此方の文章・画像等の無断転載、誹謗中傷(荒らし)は固くお断り。
管理人と趣向が合わないって方はどうぞご回避を。

*インフォメーション&リンク

*日記&アクセサークル情報&拍手お返事
染まってくだけの日々

*交流・パラレル専用のSS置き場(NL/BL/年齢制限含み)
宝石箱には夢魔が棲む

***

林檎に牙を
女×女、男×男、ジェンダー混線の恋模様
*現代/日常/性描写/NL/GL/BL

new:09/18
大護+遥人「春知らず」
あの本で待ってる

「林檎に牙を」から2年前(高校生編)
*現代/日常/学園/友情/性描写/NL/GL/BL

グッバイブルーバード
完結
「林檎に牙を」から4年前(中学生編)
*現代/日常/学園/友情/性描写/NL/GL/BL

読み切り短編

ごちゃ混ぜ作品集
*現代/日常/ファンタジー/人外/流血/性描写/NL/GL/BL

眠れる桃
休止中
妖狐、龍、人間、幽霊…絡まり合う生死と愛
*レトロ/和/ファンタジー/人外/流血/性描写/NL/BL

Stray Mermaid
休止中
娼婦が「人魚」と呼ばれる国の風俗事情
*ゴシック/洋/風俗/性描写/NL/GL



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2020.12.31 
林檎に牙を:全5種類


遠距離恋愛中の鷹とウサギ、女装癖の黒猫と従順な大型犬…
女×女、男×男の同性愛カップル達により織り成される日常。
アダムとイブになれなくても、此れを愛だと信じる獣達のお話。






キャラクター紹介(別窓)

*性描写を含む物はRが付きます。
*up



雪菜×早苗(♀×♀)
身長差/同級生/社会人×専門学校生
卒業を機に告白した事で「彼女」同士になった早苗と雪菜。
いつも一緒には居られなくても。
毒舌家な鷹とおっとりウサギの遠回りな恋。

*ウサギは何にも喋らない/告白
*捻り散らした花弁は淡桜/新生活
 <01>/<02>/<03>/<04>/<05>/end
*Cherry Soda Melancholy/高校三年生の春(1年前)
*違える花の名/一緒に居る為の隠し事



七海×秋一(♂×♂)
身長差/年下攻め/装丁家志望(男の娘)×調理師
昼はデザイン系専門学校生、夜は女装キャバ嬢をしている七海。
ある日、「捨て犬」秋一と気紛れで夜を共にしてしまい…
七変化の黒猫と一途な大型犬の慌ただしい恋。

*お洒落黒猫と遠吠え犬ブルース/初めまして(2年前)
 <01>/<02>/<03>/<04>/<05>/<06>/<07>/end
*オパールの恋人/好き?(2年前)
 <01>/<02>/<03>/<04>/end
*オスカーフレンズ/交際宣言(2年前)
*コバルトブルーの鍵/同棲スタート(2年前)
 <01>R/<02>不定期連載中
*I say nya-o/猫の日.2015
*Magic Rose Jam/口紅遊び

*パンプスを履いた猫/七海+烏丸/キャバ嬢になった訳(2年前)



拓真×遼二
体格差/年の差/製菓学校講師 助手×生徒(♂×♂)
行きつけカフェの「穏やかで笑顔が柔らかい店員」が自分の生徒になった。
助講師の拓真は、店と学校で違う顔の遼二に振り回されてばかり。
包容力豊かなクマと腹黒ヒツジの空回る恋。

*作品数が多いため別窓



一ノ助×蘭子(♂×♀)
体格差/幼馴染/大学生×高校生
親友に彼女が出来た事で、一人の時間を持て余すようになった蘭子。
幼馴染の一ノ助と距離が近付いたり、バイトを始めてみたり。
大雑把な虎としっかり者な文鳥の大人になろうとする恋。

*文鳥はフォークの上に/ケーキの時間
 <前編>/<後編>



楔波×和磨×紫亜
同級生/学園/3P/R18中心/高校生(♂×♂×♂)
学校で有名な不良双子と身体から先に始まった関係。
深く静かに恋愛感情が育ち始める楔波と紫亜、ペット扱いに一喜一憂の和磨。
ドS双子の蛇とゆるふわ龍の茨道な恋。
*はちみる の桜桃 愛さんとのコラボ企画です。

*作品数が多いため別窓

*Ginger&Mint/透子+和磨/君の幸せを願う
*Caramel&Honey/透子+和磨/君には敵わない



劇中劇
*焔のグラナイト/少年漫画、アニメ
*鬼門クラブ/少年漫画



頂き物
*青、藍、若しくは祝福/縹さんからの鞍吉君+和磨/イラスト
*World Vivid/和隆さんからのルビーさん+和磨/イラスト
*歓喜の毛並み/縹さんからの一ノ助/イラスト



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2020.12.31 
林檎に牙を:全5種類
リビングの窓に差し込む陽射しが眩しくて、大護は目を閉じた。
昼食を待っている間、ソファーに身を沈めていると眠たくなってくる。
天気の良い3月の休日、普段ならバイクで出掛けるところだが。
こうして緩み切った過ごし方をするのも悪くない。

武田家のペット、ディアナも傍らで寛いでいる気配。
わざわざ瞼を上げなくても分かる。
専用のクッションに爪を立てて、しなやかに長い尻尾を伸ばしている頃。

しかし、彼女は猫などではない。


身体を覆うのは柔らかな毛皮にあらず固い鱗。
伸ばした指先に、棘状のたてがみがちくちくと軽く刺さる。
「月の女神」なんて優美な名前にしては、大変ワイルドな風貌をしていた。
ディアナと呼ばれているのはグリーンイグアナの事である。

一時は日本でもブームが来たとは云え、まだまだペットとしては珍しい。
猫ほどの大きさでも爪も歯も頑丈で外見は恐竜。
それにしては大人しく、簡単な言葉を覚えるくらい賢い面を持っていた。

爬虫類は寒さに弱いので普段は温度調節している飼育部屋。
暖かい時なら生活スペースに連れ出して、こうして共に過ごす事も。
子供の頃、恐竜が好きだった大護は特に可愛がっている。
勿論、家族で相談して決めたペットなので一人で世話している訳ではないが。


ふと、スリッパの足音で意識が浮上した。

それは少し奇妙な光景かもしれない。
見れば足音の正体は弟。
手にしている物が不自然なのだ、青々したキャベツの葉が一枚。


グリーンイグアナは草食、主に新鮮な野菜を与える。
てっきりディアナの餌かと思いきや。

「遥人、そのキャベツ何だよ?くれんの?」
「駄目です。」

不愛想な物言いだが、遥人だって意地悪で返した訳ではない。
よく見れば葉の上には違う種類の緑。
キャベツは飽くまで乗り物、元気に蠢く小さな青虫が居た。

ああ、そう云えば母親が台所で短い悲鳴を上げていたか。


恐竜好きだった兄は爬虫類に進化したが、虫好きな弟はそのまま育った。
来月から高校生だと云うのに子供っぽい。
今も庭へ逃がしに行くのでなく、飼育ケースを探している最中。
羽化するまでの数日間だけ観察する気らしい。

「幼虫の頃に触られ慣れていると、羽化してからも記憶持っているそうですよ。」

キャベツから指先に移して、軽く愛でながらそう言う。
蝶になるのか、それとも蛾だか。
虫は怖くないものの興味が無いので大護には区別がつかず。


「ところで兄さん、今日デートだったんでは。逃げられたんですか。」
「……アコが急にバイト入ったんだよ、フラれたんじゃあない。」

それこそが家に居る本当の理由、痛い所を突かれてしまった。
優等生に見えて口が悪いのは嵐山と似ている。
「デート」だなんてあからさまな単語を使う辺り、まったく嫌味な事だ。

年上の彼女はスケジュールが合わない事が多々。
大人なだけ余裕があり、我の強い大護も軽くあしらわれてしまう。

大護も来年には家を出る予定なので忙しくなるのはお互い様なのだが。
高校生活も今年で最後、思い返せば出来る事が増えたものだ。
アクティブな彼にとっては目まぐるしい変化。
彼女の事だって含まれるが、バイクの免許を取ってから行動範囲も広がった。


弟と云えば、昔から何一つとして変わってない気がする。
碌に身長も伸びておらず、首も腕も細くて生白い。

兄弟は他人の始まり、似ていないのは外見ばかりでないとつくづく思う。
顔も頭も良い筈なのにどうも雰囲気が辛気臭いのだ。
仲が悪い訳ではないが、趣味は合わないので必要以上に干渉しない関係。


「遥人、彼女欲しいとか思った事ないのか。」
「面倒そうですし、そもそも好かれても嬉しくないですし。」

これだ、実に色気が無い言葉を吐く。
思春期なんて異性の事ばかり気になってしまう者も居るのに。
遥人は浮いた話の一つも聞いた事が無い。
やはりまだ子供過ぎるのか、他人に興味が薄いのか。

「兄さんこそ、女の子と付き合うのってそんなに良いものでしょうかね。」

思いがけず、聞き捨てならない発言。
どうしてそんな事を。


「いつもスケジュールが彼女次第なんて不自由そうですけど。」
「お前そんな目で俺を見ていたのか……」
「いえ、皆そうでしょう?べったりしてる割りに壊れやすくて。」
「捻くれているな、随分と。」

苦笑の一つも返したくなる。
クッションで遊ぶディアナを撫でながら、大護は少し考え込んだ。

くっついたり離れたり、確かに世間一般の恋人同士はそんなものだろう。
一人は楽でも、独りでは居たくないのだ。
軽い気持ちの付き合いも経験があるので大護には否定出来ない。

ただ、今の彼女に関しては大護が惚れ込んだ。
最初なんて高校生では弟扱いで相手にもされやしなかった。
飢えるように欲しがって、どんなに苦しんだ事か。
それこそ忌々しい程の熱量。

深い仲になってからは大護から甘える形。
二人の時でしか見せない顔で。
こんな面が自分の中にあったと思い知らされるとは。

良くも悪くも、人は恋愛で変わる。


「…………あ。」
「何ですか、急に。」

そう云えば、今、気付いてしまった。

遥人と愛だの恋だのの話をしたのは初めてだ。
その時点で、もう今までと違うのだと。


「いや……、今度、家に友達連れて来るから。報告する事忘れていた。」
「唐突ですね。僕の許可なんて要らないでしょう、別に。」

全くだ、下手な会話繋ぎだったと大護も我ながら思う。
不意に話題を変えたのは単なる誤魔化し。

このまま話題を続けるのは何となく気が進まなかった。
頭の片隅で「兄弟間で語り合うものではないだろう」と呆れた呟き。
気付いてしまったからには無視出来ず。
くすぐったいような、妙な居心地の悪さで一杯。

続きがあるとしたら、きっと遥人が恋を知った時。


いつまでも青虫のままではいられない。
蛹を開いたら別の生き物。
忍び寄る春に溶かされて、変化は否応なく訪れる。



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2017.09.18 
林檎に牙を:全5種類
あの本で待ってる

ページを開いて、世界を広げて
そう遠くない昔話
ずっと此処に居るから、待ってるから

たとえ淡い幻だったとしても、忘れないで

  


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2017.09.18 
林檎に牙を:全5種類
夕暮れが迫る頃、放課後の生徒会室はまた一人退席していった。
それぞれ仕事が終われば帰って良い日。
他の教室とも離れており、ただでさえ静かだった部屋に音が消える。

そう言い表せばいかにも窮屈そうな世界だが、実際には。

書面から視線を上げて見渡せば、ホワイトボードやファイルの山ばかりでない。
片隅には電気ポットに持ち寄りのカップがきっちり人数分。
おまけに良い匂いを漂わせるお菓子までも。

「武田君もその辺で終わりにしても良いからねぇ。」
「いえ、もうすぐ書き終わるので……」

そう言いながら伊東天満はカップケーキをつまむ。
今日のおやつも料理部の彼による手製、まだしっとりと温かい。
苺ジャムにバナナ、ナッツやチョコチップを散らして焼いたので種類も色々。


紺青のブレザーによく映える赤いパーカー、柔らかい栗毛。
一応は校則違反でないにしても目立つ。
ただ伊東の場合は何も格好の所為ばかりでもないか。
睫毛が長くて大きめの垂れ目は愛らしく、少女のように甘い顔立ち。

これで早生学園高等部の生徒会長だと云うのだから驚く。
見るからに生真面目な生徒が務めるものだと思っていたのだが。

威厳は置いといて、伊東が選ばれた理由は全くの謎でもない。
笑みを絶やさず人当たりの良い彼が居てこそ、堅苦しくならずに済んでいる。
そして指示が的確と云うか、人を使うのが巧いと云うか。
仕事に慣れてくるうち分かってきた事。


中等部と打って変わって高等部の生徒会は雰囲気が緩い。
仕事もきっちりこなすが、先程まで繰り広げられていたのは半ばお茶会だ。

周囲からの推薦で流されるまま決まったとは云え、拍子抜けしてしまった。
書記の一年生、武田遥人は聞かれないように溜息を吐く。
艶々した黒髪に退屈そうな猫目。
成長期前なので、まだ小柄で華奢な身体つきに制服は緩い。


実はベテラン俳優の息子と云う肩書を持つのだが、注目されるタイプではない。
昔から大抵、外交的で父親似の兄に人は集まるものだった。
お陰様で母親似の物静かな遥人は干渉されず自由にやってこられた訳だ。

平気で人前に立てる父や兄と違って、遥人は裏方の方が落ち着く。
生徒会の仕事も嫌ではないので淡々と。

それに早く帰ったところで、やりたい事がある訳でもなし。
彼氏彼女と約束があるからと去って行った役員達に対しても無関心の目。
放っておけばいい、どうでもいい。
人を好きになった事すらないので全くの他人事だ。


しかし、やはり切りの良いところで帰るべきだったか。
今日のうちに仕上げてしまおうとしたら遅くなってしまったようだ。
いつの間にか、引き戸のガラスに見慣れた人影。

ああ、また狼が出た。


「よぉ、伊東居る?」
「いらっしゃい白ちゃん。」

獣の耳みたいに跳ねた癖毛を覗かせて、呼び声一つ。
尖った形の目で生徒会室を見回した。
遅れてきた役員ではない、演劇部部長の白部である。

来訪する事なら伊東も分かっていたのだろう。
にこやかに招いて、お茶会に一人増えた。


伊東に声を掛けたものの本当に用があるのは食べ物の方だ。
空いた椅子に腰を下ろすと、白部はバナナケーキを無遠慮に食い付く。
伊東も気前良く葡萄ジュースを注いで飲み物の準備。
此処にあるカップの人数分とは役員だけでなく、白部も含まれている。

「がっつかなくて大丈夫だよぉ、白ちゃんの分も取っておいたから。」

赤いパーカーの伊東と狼に似た白部。
肩を並べると、何だか「赤ずきん」を思わせる組み合わせである。


「なぁ悪いんだけど。借りてたDVD、兄ちゃんに返しといてくんねぇ?」
「え?はぁ、別に良いですけど……」

ふと此方に向き直ると、白部が手提げを渡してきた。
彼ら二人も兄と同学年なので友人関係らしい。
だからと云って、その繋がりで遥人とも仲が良い訳でもないが。

それどころか正直な話、遥人は白部にあまり良い印象を持っていない。

こうして立ち寄っては、残り物のお茶とお菓子を喰い尽す。
演劇部は意外と体力を使うのでいつも空腹らしい。

生徒会室は休憩室ではないのだが、果たして良いのだろうか。
真似する生徒が後を絶たない事態なんてのも予測される。
最上位の権限を持つ伊東が許しているので、口を出す幕はないものの。
ご馳走するのは白部だけなのでよほど仲が良いのだろうけれど。


「白ちゃん、苺のも食べる?」
「ん、そんじゃぁ貰おうかね。」

ほんの数分、すっかり寛いだ白部は我が物顔にすら見える。
伊東の柔らかい空気に当てられた所為もあるか。
葡萄ジュースの筈なのだが、ワインでほろ酔いになったかのような。

伊東が自分の苺ケーキまでも半分に割り、気前良く与える。
けれど勧められるまま喰い付いたのは欲張り過ぎ。


「うわっ、ドロッと出た。」

勢い余ってか、溢れてきた苺ジャム。
まるでケーキが血を流したようでもあり遥人は密かに顔を顰めた。

片や、伊東は「子供のようだ」と白部の汚れた口許を笑う。
実に無邪気な声を立てて。
ご丁寧な事に、伸ばした指先でジャムを拭ってやった。

そのまま舐め取り、一瞬だけ覗かせたのは艶めいた愉悦。


あれを目にしたのは遥人だけだろう。
残り少ない役員達は、そもそも彼らの方など気にも留めず。

ああ、確かに気付かされた、全ての認識は逆さまだったのだと。

赤ずきんのお菓子が目当てで狼は通っていたのではない。
寧ろ、あれは罠だったのだ。
甘ったるい匂いで棲家へ誘い込み、食べられる為の。


「……白部さん、僕のも良かったら要りますか?」
「そりゃ勿論食うけど、どうした急に。」
「何だか、食べられなくなったと云うか。」
「意味分からんよ。」

こんなに手間暇が掛けられた罠、遥人がいただくのは申し訳ない。
毒なんて混ざっていないにしても。
しっかりと責任を持って狼に平らげてもらわねば。

偏見も無ければ興味も無い。
此れは赤ずきんと狼の物語だ、遥人はそっと舞台を降りた。



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2017.09.08 
林檎に牙を:全5種類
早生学園高等部
幼稚舎から大学まで一貫している私立、偏差値は中の上。

望月 青葉(モチヅキ アオバ)/♂/176㎝
二年生/演劇部(副部長)
ふんわり癖毛、伏し目がちで前歯大きめ。グレーのウサ耳パーカー。
物憂げで飄々としており、他人に流されない。幼馴染の忠臣が好き。
演劇部では女装が板についてきている。

芹沢 忠臣(セリザワ タダオミ)/♂/170㎝
二年生/帰宅部
ツンツンベリーショートで三白眼、柄は悪いが生真面目な読書家。
皮肉っぽく短気。青葉とは10年来の幼馴染で悪友。

北倉 千紗(キタクラ チサ)/♀/158㎝
二年生/演劇部
青い花のピンで留めた長い髪、黒々とした瞳。
柔らかな物腰ながら欲望に忠実な文学少女。

庄子 公晴(ショウジ キミハル)/♂/168㎝
三年生/演劇部(脚本)
ふんわり褐色の髪、丸っこい黒目の童顔。作家、荒井新月の孫で嵐山の従兄。
人当たりが良く、ちょこまか機敏。マスコットとして可愛がられている。
怖い話が好きで創作怪談のブログが趣味。文系だが運動も得意。

白部 星一(シラベ セイイチ)/♂/175㎝
三年生/演劇部(部長)
毛束太めのミディアム癖毛、アーモンド形の尖った目。食欲旺盛ですぐ空腹。
舞台では悪役が多いが、普段は面倒見の良い先輩。
真っ暗では眠れないくらいの怖がりなので公晴の怪談には辟易している。

伊東 天満(イトウ テンマ)/♂/172㎝
三年生/料理部・生徒会(会長)
柔らかい栗毛に甘い顔立ち。赤いパーカー。
強かな甘え上手で小悪魔的、人の懐に入るのが巧い。
昔から白部がお気に入りで「白ちゃん」と呼びつつ餌付けしている。

嵐山 悠輝(アラシヤマ ユウキ)/♂/165㎝
二年生/演劇部(衣装係)
サラサラな褐色の髪に切れ長の目、線が細い。手先が器用。
興味ない事には恐ろしく素っ気なく、愛想も無い。
反面、大事なもの(人)にはとことん執着し、梅丸に対して嫉妬深い。
*Character by りんごあめ(ういちろさん)

梅丸 灯也(ウメマル トウヤ)/♂/178㎝
二年生/演劇部(大道具係)
ワックスで癖を付けた赤味の髪、一重で釣り目。無表情の強面で不良に見られがち。
黙っていればクールなのだが、訛り口調の所為でいまいち垢抜けない。
独占欲の強い嵐山に振り回されつつも、可愛くて堪らない。

武田 大護(タケダ ダイゴ)/♂/177㎝
三年生/帰宅部
毛束の先が尖った茶系のミディアム。シャープな眉に猫っぽい吊り目。
ベテラン俳優、宍戸帝一の息子。容姿から声質まで似ているので苦労している。
自信家で俺様気質、行動力は人一倍。公晴、嵐山とは幼馴染。

武田 遥人(タケダ ハルト)/♂/162㎝
一年生/生物部・生徒会(書記)
黒髪ストレート、猫目でコケティッシュな顔立ち、華奢。
大護の弟だが、母親似なので兄ほどは父親の事でいじられない。
理知的で物静か。いつも何処か退屈そうで恋愛に興味なし。



北紅高校
北紅駅前のアーケード街を抜けた先にあり、自由な校風。

早未 遼二(ハヤミ リョウジ)/♂/172cm
二年生/カフェバイト
鳥の巣めいた癖毛に眼鏡、クールで大人っぽい雰囲気ながら眠たがり。
女子から評判は良いが、幼馴染の兄に長年片思いしている同性愛者。
バイトの無い放課後は神尾と昼寝・触り合うだけの仲。

神尾 承史(カミオ ヨシフミ)/♂/181㎝
二年生/劇団所属
無造作な黒髪、伏しがち垂れ目に緩い口許。ラピスラズリのピアス。
いわゆる田舎の権力者の息子。当人にとってはどうでもいい。
独特の価値観と観点の変わり者。色気があり、来るもの拒まずなので遊び相手が複数。
最初から遊び以上にならないと言い渡し、一人ずつ公平なルールを決めている。



庄子 肇(ショウジ ハジメ)/♂/174㎝
職業:英語、フランス語講師/34歳
サラサラの黒髪ショート、筋肉質で細身、細面に切れ長の目。
嵐山と公晴の叔父。庄子家の末っ子長男で姉達とは10歳近く離れている。
沈着冷静と評判の色男だが、隠れサディストで甥達には大人げない面もあり。
現在は隣街に在住、乾専門学校に勤務。

2017.09.08 
林檎に牙を:全5種類
ブザーを合図に幕が開けば魔法の始まり。
暗闇から浮かび上がる舞台の上は、切り取られた別世界。
たとえ作り物だとしてもそこに憧れた。


演劇部を選んだ切っ掛けは何だったか。
部員達に訊けば皆それぞれ違う回答、今でこそ部長なんて務めている白部も。
彼にとってのスターはただ一人。
舞台に立っていた宍戸帝一の姿が、今も焼き付いているから。

親が芝居好きなので、劇場なら幼い頃から連れられたものである。
勿論、子供には退屈なものも多いので毎回が賭け。
やれやれと思いつつ、白部自身もそれなりに楽しんではいた。

なので、観賞自体はすっかり慣れ親しんでいたのだ。
転機は明確にあの時、あの舞台。

童話をモチーフにした話で、宍戸帝一が演じたのは悪役のライオン。
名の通り彼はまさに帝王だった。
スポットライトを浴びた金色の髪に、威風堂々とした姿。
あんなにも麗しいと感じた男性は初めてで。



「だからオレからしたら、武田の立場って羨ましくもあるけどさ。」
「そりゃあ役者としての話だろ、父親としてはどうだか。」

そう白部が溜息を吐くと、大護は緩く横に首を振る。
帝王の息子は実に冷めた表情と返事。


学校から徒歩数分、ファーストフード店での会話である。

大護とは一緒に来た訳でも待ち合わせしていた訳でもない。
小腹が空いた放課後、バスを一本遅らせた白部はふらりと立ち寄っただけ。
夕暮れが近付きつつある店内は賑やか。
見渡せば他に空席も幾つかあったが、何となくの相席になった。

食べ盛りの上に二人ともよく食べる方。
セットメニューを頼んでおいて、帰宅後は夕食も平らげるのだ。
横から大護を見ると、口を開けた時に牙が目立つ。

狼を思わせる白部と、例のライオンによく似た大護。
並んでハンバーガーを齧っているとますます肉食獣じみて可笑しい。


白部が小学校の頃に転校してから約10年、大護とは何度か同じクラスになった仲。
顔を合わせると軽いお喋りくらいはする。
一貫校は顔馴染みが多い、付いたり離れたりと波のような人間関係。

父親の話題を出すと不機嫌になるのは知っていた。
だからずっと避けるようにしていたのに。

今日ばかりは何故だか、舌から言葉が滑り落ちて始まった。
大護が付き合ってくれているのも意外だが。
苦い顔をしつつも逃げず、だらだらと会話は続いている。

それに憧れは強くても、白部も宍戸帝一を目にしたのは舞台上や画面でのみ。
同じ地元に住んでいるとは云え、そうそうプライベートで逢えるものか。
ばったり出くわすほど街は狭くない。
大護に頼み込むなんて恐れ多い事も出来やせず。


イメージなんて人それぞれ。
白部にとって宍戸帝一はライオンだが、大護にはただの父親。

そして他のファンからしても、どのキャラクターを思い浮かべるかは違う。
何しろ仕事を選ばない役者なので出演作は非常に多いのだ。
若くて細身だった頃の恋愛ドラマでは気怠げに微笑む美しい青年。
また特撮では子供を泣かせの冷酷非道な中ボス。
更にホラー映画では、気性が激しくエキセントリックなゾンビの王。

それでも全体を通してみればやはり悪役が多い。
白部も勿論影響を強く受けたもので、舞台では憎まれ役を買って出てきた。
赤頭巾ちゃんの狼だとか、ピーターパンのフック船長だとか。

悪役は演技力が高くなければ務まらないと云われる。
白部の教科書は宍戸帝一、どれだけ作品を繰り返し観て勉強したやら。


「俺は親父の番組ほとんど観た事ないからピンと来ないけどな。」
「いや、応援くらいはしてやれよ……」
「この俺とほぼ同じ顔してるってだけでむず痒いわ。」
「そこは別として、面白い作品も多いんだぜ?」

なんて白部は言いつつも、あの恋愛ドラマは特に見難いだろうと思い直す。
どれだけ名作でも父親のラブシーンと云うだけで理由は充分だ。

考えてみれば、今の自分達とそう変わらない年でデビューしていたのだ。
尤も、バイクを乗り回して野性味が強い大護とは全く重ならない。
顔立ちは兎も角として、確かに別人。
耽美な雰囲気のキャラクターと現実の高校生を比べるのも不毛な話だろう。


ハンバーガーで最後の一口はソースまみれの大きめ。
少し無理に詰め込んだ白部が頬を膨らませて咀嚼している隙の事。
ふと横から大護の手が伸びて、袋のポテトを一本盗んでいった。

悪戯小僧の表情で此処に居るのは、同級生。
だからこそ友人になれた。


「そうだ……、ホラー映画の方なら親父のサイン付きDVDやるよ。」
「んんん!」
「何だよ、首横に振って。遠慮する事ないじゃあないか。」
「うぐ……」

白部の怖がりを知っていて、この仕打ちである。
口に物が一杯で喋れない事も。
最初から言葉で勝てないのは分かっているのだが。
どうしたものかと思いつつ、そうして甘んじてきたので今更の話か。

呑み込んだところで白部が返すのは反論でなく、ただの苦笑。
こんな意地悪も何処かのドラマで見たような気がして。



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2017.08.29 
林檎に牙を:全5種類
顔を売り物にする人生と云うのはプライバシーが犠牲になる。
当人なら覚悟の上だ、自己責任。
しかし、血縁者の身からすれば堪ったものではなかった。


真面目な話、武田大護は自分の顔にコンプレックスを抱えていた。
思春期にありがちな悩みとかではなくて。

不細工と云う訳でもない、むしろ逆である。
シャープな眉に猫科の獣に似た吊り目、大きめの口許には目立つ牙。
華のある顔立ちに身長も高く、集団の中でも目を引く存在。

それは彼の父親によく似ているのだ。
「宍戸帝一」の名でカメラの前に立つ、俳優である父親に。

若い頃から美形が勿体ないほど仕事を選ばず、多様な活動で知られる。
必要とあれば全裸すら晒し、またある時は派手なメイクに奇抜な衣装までも。
仕事熱心と云うか、サービス精神と云うか。
ベテランとして売れている今現在でも変わらないので大したものである。

お陰で生活は豊かでも、顔が売れるほど複雑な心境なのは血を分けた息子だ。
弟も居るが、そうした言葉を掛けられるのは自分だけ。
あちらは母親似なので回避出来ているのが何となく狡いとすら思ってしまう。

どうやっても父親の影がついて回るのだ。
何処へ行っても「似ている」と言われるのが、大護にとって一番忌々しい。


「ダイ、お前は父親ほどガチムチじゃないだろ。似てるとかおこがましいな。」
「ちびもやしのユウちゃんに言われたくねぇわ。」
「ユウちゃんもダイちゃんもさ、いびり合うよりお菓子でも食べなって。」

作家「荒井新月」の孫達は、そうやって愚痴をさらりと受け流す。

幼馴染の公晴と、家へ遊びに行くと鉢合わせる確率が高かった嵐山。
そうして何やかんやで細く長く三人で過ごす仲である。
二人とも小柄で色素が薄く、髪は煮詰めた砂糖を連想させる褐色。
一見すると兄弟のようだが従兄同士。

それらの点も間違いなく祖父譲りだ、昔馴染みなので大護も逢った事がある。
ふんわりした毛並みに丸々した目の公晴は特に似ていた。
老齢の荒井氏も、きっと昔々はさぞ可愛らしい少年だったのだろう。

俳優と作家では立場が少し違うけれど。
そもそも、あちらは物書きなのでメディアに顔を晒さない主義。
仕事の時以外で関心を持たれるのは煩わしいそうだ。
街を歩いても騒がれない辺り、大護には羨ましい限りである。


とは云え、学校生活の方は意外と平和なのだが。

彼らだけに限らず、早生学園は著名人の血縁者がひっそりと在籍している。
幼稚園から一貫している生徒も多く、顔馴染みばかりで居心地が良い。
下手に騒ぎ立てる輩はむしろ「見苦しい」と一蹴される。
からかわれたとしても必要最低限、環境に恵まれたとは自分でも思う。

そうして狭い世界で暮らしている分には良いが、大護には窮屈でもある。
行動力がある性分なので小さく纏まってはいられない。
バイクで遠出もしたいし、いっそ海外にも行ってみたい気持ちも。


「そりゃ僕も賛成、もう帰って来なくて良いよ。」
「俺だってお前の顔見なくて済むけど、腹立つなオイ。」
「そもそも何しに行きたいんだよ、田舎者が都会とかに憧れてるだけ?」
「待て待て、田舎者はブーメランだろ。俺ら地元育ちなんだから。」

甘い顔立ちの嵐山だが、切れ長気味の吊り目で口が悪い。
手厳しい軽口なんてお茶請け代わり。
ペットボトルのジュースを煽りながら、いつもの打ち合いは続く。
空気は決して張り詰めず、だらだらと緩んだままで。

公晴で繋がりが生まれなければ、きっと嵐山とは口を利く事も無かっただろう。
友人だなんて称するのは互いにお断り。
それでも、知人と呼ぶよりはもう少し近いと感じる。

そして二人と一人に分かれても、すぐ側の公晴は呑気なものだ。
止めもせずに何か食べながら傍観者。


「そーいやダイちゃんお父さんさ、仕事あるなら都会に住んだ方が良くない?」
「田舎っちゃ田舎でも関東圏だから通えるし、芸能人ってそんなもんらしい。」

そう云う事で父親は仕事で留守も多いが、家族揃って紅玉街に住んでいる。
反発はしているものの嫌っている訳ではない。
幼い頃なんて、兄弟二人とも愛情不足を感じるどころか過保護だった。
むしろ放任でちょうど良いと思っていたくらい。

父親も此処で育ったので、学生だった頃は地元劇団に居た事もある。
「宍戸帝一が所属していた」と云う宣伝によりそこそこ有名。
芸能界入りした後輩も数人らしいが、大護には関係のない話だった。


にも関わらず、芝居の勧誘をされるのが鬱陶しい。
二番目に忌々しい事。

無責任に二世タレントを勧められる冗談なら昔から浴びせられ続けてきた。
全く笑えない話である。
父親が俳優でも、息子は演技に興味があるとは限らないだろうに。
大護の好きな物はバイクと爬虫類、遊び程度でギターだ。


早生学園にも演劇部はあるが見ないふりで通り過ぎてきた。
人気の高い部活なので、舞台に立ちたい生徒なら幾らでも居る事だし。

公晴と自分が違うと感じるのも、この辺り。
文章を書くのが得意なのも祖父からの遺伝か、脚本担当で演劇部。
プレッシャーなどは感じないのかとも思うが杞憂か。
第一、「似ている」と言われても彼の場合は嫌な気分にならないのだし。

「その血の運命ってやつじゃないかな。」
「ジョジョかよ。」

苦笑いを返して、そこから先の言葉は呑み込んだ。
遺伝の話なんてもう何度も繰り返してきた。
とっくに飽きてしまった事をやる必要なんて無いだろう。

一方で誘われた形で嵐山も演劇部だが、脚本には関わらず衣装係。
好きな事の為だ、誰に言われるまでもなく。

道はそれぞれ、それで良い。


「GWは白雪姫やるから観に来てよ、ユウちゃん舞台デビューだよ。」
「あぁ、小人役か。」
「毒林檎でも食べてろ。」

打ち合った言葉は掠り傷一つ付かずに流される。
そこから生まれる平穏。



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2017.08.20