林檎に牙を:全5種類
*R指定描写(♀×♂)

予定ではもうちょっとライトだったんですが、書きたい物が途中で大幅に変わったなぁー…
かさぶたを口で剥がすのはエロいと思います。
空に夜の帳が降りれば、涼しくなるのはどの季節でも同じ事。
深砂が頬杖を突いた作業台も随分と冷たく感じる。
灯りを消した部屋。
ジーンズを脚に通しただけの恰好、上半身が剥き出しなら尚更。
椅子の上に片膝を立てた侭で見ていた。

素肌にストールだけを纏い、横たわった男の身体。
乱れ散った髪は巻き癖の金茶。


見蕩れている、などとそんな穏やかな物ではない。
此の暗さでも突き抜けて刺さるような尖り。
深砂の眼に狂気が息衝いている事を、当の和磨は知らない。
瞼を閉じて、無音の呼吸を繰り返すだけ。

作る物が等身大の人形なのだから、台は大人一人など悠々と載る。
自ら倒れ込んで誘ったのは和磨の方。
衣服を床に放って深砂に啼かされた後、半失神で眠ってしまった。
何と無しに手遊びで弄るのは役目を終えたゴム。
濡れた体液は乾き掛けて、深砂の指先にベタ付く。

こうして居ると、目の前の男は既に人形ではないかと思う。


触れてみても、夜気に冷えた表面は体温を感じない。
闇と余韻が見せる一瞬の錯覚。
疾うに食い殺して、魂を移し変えて、永久の物と。
人ならざる術を手にした此の身ならば不可能ではないのだ。
其れは余りにも危険な願望。

若しくは遂げる事も出来るだろう、今なら。
無防備な喉を食い千切るのは容易い。
静かな動作で、眠り続ける男の上に柔らかく圧し掛かった。

裸の重い乳房が平らな胸の上で柔らかく潰れる。
開いた唇には、牙。



「痛ッ……ぁ、何……?」


目覚めと同時、和磨が上半身を起こした。
其れでも止める気など無い。
脈打つ場所を避けて、深砂が噛み付いたのは肩。

交わりの度にいつも齧る場所。
漸く乾いた傷口、血の塊を引き剥がそうと歯を立てる。

意図が読めず訝しんだところで、和磨には何も出来ない。
息を乱して鋭くなる痛みを愉しみ始める。
疑問すら掻き消える程。
すぐ耳元で上がる声は苦しさに耐えて、甘い。



頑固な最後の欠片も舌を一刷けするだけで口腔の中。
奥歯で噛み砕いて、躊躇わずに呑み込んだ。

吐かれた安堵の息で埋めた赤毛が揺れる。
強張っていた和磨の身体は弛緩したが、深砂は解放した訳ではなかった。
此れだけでは終わらない。
蓋を取り払われた患部は再び潤む。
生温かな鉄の匂い。
零れ落ちる程でなくとも、血が滲み出した気配。


「声、もっと聴かせてね?」

言いしな、手探りで拾い上げたのは先程のゴム。
水風船に溜まった中身を搾り出す。
落下地点は傷口。
再び押し当てられた深砂の唇が、雫ごと強く吸い上げた。

声は悲鳴よりも咆哮に近く。
さりとも、痛みの悦楽が隠れ切れずに。


熱くなった身体そのままの温度。
嗜虐に酔わす匂い。
喉の奥まで粘り付く苦味。

舌先で混ざり合って一つになる、血と精液の色。


まだ、大丈夫。
失いたくない、浸っていたい。

"いつか"は必ず来るだろうけど。


何処でもない、今。
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2009.08.02