林檎に牙を:全5種類
*R指定描写(♀×♂)

目隠しして悪戯。
描写はそうでもないけど、雰囲気的にRです。
閉ざされた寝床では月の光さえも届きやしない。
真夜中を映すのは橙色のランプ一つ。

ただでさえ小暗い室内は影が大きく、物を見定める事を邪魔する。
けれど和磨の眼前に在るのは何も無い闇。
施された目隠しに視覚を完全に奪われ、裸で座り込んだ侭。

吐息は篭もって重く、熱い。



「……深砂ちゃ、」
「此処に居るよ?」

不安な両手を一纏めに、上から冷えた指先が絡み付く。


もう片方は先程から変わらずに和磨の肌を行き来しながら。
感度が鋭くなっている所為でただ撫でられているだけでも声が零れてしまう。

暗黒の中では、華奢な五本足の蜘蛛になる。
這われる事で快楽に震え上がっても、いつ噛まれるかと恐れて。
毒が回れば今度こそ狂ってしまう。

重なった手は安堵を与える為よりも、拘束の方が近いのかもしれない。
抗おうと思えば可能である女の非力でも。
実際、動かす事など出来なかった。
見えない糸で縛られて、固まったまま。


気配で探り当てた深砂の顔に唇だけで触れる。
ぎこちなく口付けを交わして、鼻先、頬、こめかみへ。
ピアスまで行き着いた時、堪らなくなって冷たい耳朶ごと咥え込んだ。
舐め転がして味わい、銀色を舌で強く磨き上げる。

飴玉を口にしている錯覚。
そんな筈は無いと解かっているのに、沸き立つ唾液が焼ける程に甘い。
深砂の香りが舌まで麻痺させる。

若しくは、下僕になったように。
主人に忠誠を誓う儀式にも似ていて、息衝く倒錯感に背筋が嬲られる。



夢中だった所為で、気付かぬうちに緩んでいたらしい。
不意に目隠しが音も無く落ちた。
一歩引いたのは反射的、半ば驚いた眼でも初めて向かい合う。

いつもの濃紫の上着を素肌に一枚羽織ったままの深砂。
隠す物が無い和磨には、此方だけが乱れているようで急に気恥ずかしくなる。


「解いちゃうなんて、悪い子。」


微笑も声も優しくとも艶めかしく。
茶褐色の瞳は煮詰めた砂糖にも似ていて、思わず喉が鳴る。

早く中に入れさせて、温めて、此処が現実だと教えてよ。
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2009.10.22