林檎に牙を:全5種類
*R指定描写(♂×♂)
突き刺した時に抵抗感を伴う、女の秘裂とは全く違う入り口。
拓真を拒むかのような、きつく握られるような。

それでもローションで潤んだお陰で幾分柔らかい。
指先さえ潜り込めば、易々と進む。
包まれていく体温に思わず背筋が震え上がった。

ただでさえ視界を鈍らせる薄闇、遼二の導きで死角へ消えた手。
見えない分だけ伝わる感触は鮮明になる。


「それじゃ、もう、良いですね……」

徐々にと根元まで埋まった辺りで、不意の事。
抗えない強さで急に引き抜かれる。

名残惜しく追い掛けるローションの滑り。
此れで終われる訳がないのに。
読めない遼二の行動に戸惑いつつも、更に欲情を促した。

「えっ、あ……、けど……」
「何ですか?」

何を言えば良いのだろう、此の場合。
解かっていながら続きを訊ねる遼二は人が悪いと心底思う。
眼を細めた表情と、囁く低音。
まだ壊れない余裕の色が無性に悔しくて切ない。

「お前が……、早未が、欲しい。」

他に上手い台詞なんて見付からなかった。
こんな物でも精一杯。
口にした傍から恥ずかしくなってしまう。

「良いですよ。」

在り来たりを嘲たのか、硬質な芯が解けたのか。
それでも確かに遼二が笑った。



ローション塗れでは包装紙も破けやしない。
封を食い千切った遼二が残骸を吐き、中身を取り出す様を見ていた。
似つかわしくない荒々しい仕草の艶。
その手で施される薄いゴムは、ゼリーで濡れて冷たい。

避妊具もローションも準備良く持っている理由。
押し倒すつもりで拓真に逢いに来たのだろう、最初から。

膝立ちの細い腰を持ち上げて、跨いだ刀身。
今にも爆ぜそうなくらいの心音。
拓真の胸に着いた腕を突っ張らせているので伝わってしまう。

宛がわれた切っ先が、遼二の入り口を抉じ開けた。


「……ッ、うぅ……!」

重苦しく歪んだ表情と声。
涙の塩気すら絡んで、痛みに耐えている。

潤滑液で慣らされて柔らかくなった後と云えども未開通。
そう簡単に侵入させてはくれない。
覚悟を決めて急かされる気持ちと裏腹に追い着かず。

それでも、もう止められない。

されるがまま任せて、今まで仰向けに倒れていた裸身。
一つの意思で拓真が上体を起こした。
至近距離の向かい合わせ。
苦しむ顔を引き寄せ、初めて、唇を重ねる。

硬く握られた拳を包んで繋いだ手。
高まった熱が冷めてしまわないようにと。

食い縛る歯を開かせ、縮こまっていた舌先に触れる。
引き出す必要も無く向こうからも絡めてきた。
組み合う瞬間に理性も振り切れる。
流れ込んだ唾液の甘さに酔い痴れ、水音も激しく貪った。

当たって冷たく鳴る眼鏡も、切れ切れだった呼吸も構わずに。
息の根を止めそうな程に深く深く。


突き刺さったまま止まっていた腰。
意識を口付けに集中させながら、じりじり体重を落とす。
麻痺が効いて打ち込まれていく。
全て受け入れてくれなくても良かった。

「ああ……、出来ないのかと思いました、キス。」
「度胸無いみたいに言うんじゃねぇよ……」

震える声に、紡いだ糸が儚く消えた。
混ざり合った唾液が零れる。
拓真の顎を伝い、鬚まで濡らしていく。

受け入れる場所が女と違う為、腰を突き出す格好。
しっかりと抱き竦めた身体は細くても硬く。
あやすつもりで後ろ頭を掌で包んだ。
冷たくて柔らかい髪に、無骨な指先が埋まる。

此処に居るのは、確かに遼二なのだと云う実感。

密着した下腹部の間にもう一つ、熱の塊。
手を伸ばしてみたら途端に顰め面。
けれども拒絶はされず、ゆっくりと撫で上げる。
既に溢れていた蜜が匂い立つ。

「あ……ッ、ぐぅぅ……!」

苦痛ばかりでなく様々な許容量が限界だった身体。
最後の一押しによって迎えた沸点。
仰け反る遼二が白濁を爆ぜる。

逝けた表情に安堵して、拓真も吐き出した。




いつの間にか夜が訪れた外では土砂降りだと、漸く気付いた。
まるで夢から覚めたような気分。
消えてしまうのが惜しくて、ただ雨音を聴いて動けずに無言。

引き抜いた後も離れない身体二つ。
余韻に任せるまま倒れ込んで、続いていた荒い呼吸。
濃く立ち込めた匂いに朦朧とする。
苦しくて堪らなくても、やがて微かな物へと変わっていく。


ローションと体液が染み込んだ長座布団の湿度。
背中に感じながら、圧し掛かる重みを腕に抱いていた。

最後までシャツを脱がず、全て目にしないままの素肌。
此の期に及んで隠す必要もあるまいし。
一度繋がったくらいでは、まだまだ未知の部分ばかり。

「俺……お前の身体も、ちゃんと見たい……」
「じゃあ……、また今度。」

はぐらかされたかと思えば分かった事は二つ。
今は駄目だと、そして"次"があると。

いい加減、落ち掛けていた眼鏡は外して枕元に置いた。
痛みで滲んだ涙により潤んだ、遼二の双眸。
長年の片想いが終わった時も泣かなかったくせに。
あれもまた今まで知らなかった表情。


それからまだ、曖昧なままにしておけない事が残っている。
結局、有馬の件はと云うと。


「そうですね……、本当の事言いましょうか、そろそろ。」

しつこいと一蹴される恐れも覚悟で、口にしてみれば。
遼二の返事は小さく震えていた。
軽く抑えた口許に、笑いを堪えた目をして。

まさか、謀られたのではないだろうか。
拓真が居るのを知っていての芝居だったと?

思わず過ぎったそんな考えを口にしたが、振られた首は横。
ますます解からなくなってしまう。
あれが告白ではなかったとしたら、何だと云うのか。


「あの時の会話なんて保志さんはっきり覚えてないでしょうし……
 教えてあげますよ、その台詞の前にもう一人の名前挙がったんです。
 僕と仲良いけど付き合ってるのかって。
 有馬が「望みあるか」って訊ねたのは……さーちゃんの事ですよ。」

勝手に絡まっていた糸を遼二が解いた。
呆気無い程に、一瞬で。


「そんな訳無いでしょう、いきなり同性に告白されるなんて。」

冷たくもなければ笑ってもいない。
当然の事を軽く口にする遼二の眼が、却って痛かった。
それも同性愛者から言われてしまったとなれば。

情欲が落ち着いた後だと云うのに、別の意味で熱くなる。
一ヶ月近くも何をしていたのだろう。
延々と悩んでいた自分を殴ってやりたい衝動すら。
馬鹿じゃないか、と恥じる拓真が顔を隠して縮こまった。


長身で愛らしい顔立ちに、よく気が利く早苗はクラスでも目立つ。
男子から誘いがあっても決して応じないが。
有馬も本気の一人だとしても、確かに妙な点も見当たらないか。

東と有馬で、出席番号順だった班はつい最近まで一緒。
それが例の事件により分かれてしまったのだ。
しかし今度は意中の彼女と仲の良い男子、遼二と同じになった。
これこそ腹を探るには絶好の機会。

飽くまで、学校の遼二はぼんやりしがちで鈍そうにも見えるのだ。
利用しようと有馬が近付いたのは、本性を知らない故。

加えて、丁度テスト期間が迫っていた時期。
遼二も遼二で優等生を利用しようとしていた訳である。
それはそうと肝心な話、早苗との事はどうするのかと思えば。


「僕はねぇ、見たいんですよ……有馬がさーちゃんに振られるところ。」

難攻不落どころか、有馬では無理だと断言する理由は不明。
実は彼氏でも居るのだろうか。
そう訊ねたら曖昧に濁されたが、遼二の言葉は続く。

「自信たっぷりで、出来杉君みたいな人生送ってきた男ですからね。
 どんなに頑張っても無駄って知る事だって必要でしょう?」

別に有馬に対して恨みなんて無いくせに。
愉悦で溶けた表情の柔らかさは、それこそ何だか怖くなってくる。
とんだ悪魔を好きになってしまったかもしれない。


そう思う間も無く不意に、闇を引き裂いた雷鳴。
反射的に耳を塞いだ拓真が身体を硬くした。

けれど、此処には一人ではないのだ。
情けない姿を笑うような口許、それでも遼二は抱き締めてくれた。
「大丈夫だ」と言葉にする代わり。

雷が苦手なのでいつも憂鬱だった夏が来た。
今年は、傍に居てくれる相手も連れて。


*end

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2012.12.31