林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)
外から響いた重い衝撃で拓真が目を覚ました。
何処かの屋根から積もった雪が崩れたのだろう、もう幾度も聞いた音。
布団から腕を伸ばすと静まっていた空気に鳥肌が立つ。

カーテンを捲れば、窓の外は恐ろしい程の真白。
記録的な豪雪で塗り替えられた土曜の午後。

「寒いんですけど……」

肩まで掛けた毛布の間から恨めしげな低音。
睡眠に関しては貪欲な恋人。
寝返りを打って、遼二がいつもより癖だらけの頭を向けた。



灰色の空を迎えた金曜の朝、ひらひら舞い降りる雪に人々は嘆いた。
歓声を上げるのは呑気な子供のうちだけ。
天気予報で危険視されていた通り、時間が経つにつれて埋もれていく。
重く厚く圧し掛かっては洒落にならない状態。

電車も車も交通機関を麻痺を始め、外出は命懸け。
多くの者が家に閉じ込められて週末を過ごす事になってしまった。


専門学校にも早めの帰宅命令が下された。
駅まで車で来た遼二に送ってもらって、アパートでお別れ。
それだけで充分だったのに。
帰した方が良いと思ったのだが、遼二はそのまま駐車場でキーを抜いた。

「保志さん、独りは寂しいんじゃないですか?」

ふわふわ頭に雪を散らしたまま、此方を見上げる涼しい目。
拓真の為だと言われたら頷くしか出来ず。


週末ならいつも泊まっていくので、確かに遼二の物なら揃っているけれど。
今回ばかりは月曜まで我慢だと思っていた。
そうして離れる覚悟していた拓真に対し、共に篭城するとの宣言。
いつから腹を決めていたのやら。

今のうちに色々と買い込んでおけと、無理にでも寄り道したのは此の為か。
二人分となれば食料不足の可能性は足早に訪れる。
普段賑わっている場所だけに、客の少ないスーパーは何処か不吉に感じた。

言われるまま米も野菜も手に入れたので、数日分は問題無し。
お菓子だったら専門学校の実習で作った分があるけれど。
下手すると主食がケーキになってしまう。
どんなに甘い物が好きでも、それは流石に遠慮したい。


布団の中、暖めるつもりで背後から細身へ腕を回した。
何枚着込んでも華奢な腰。
寒がりの遼二は冬になると注意深く肌を隠す。

午前中はアパートの住人総出で雪掻き。
何とか目処はついたが、明日もスコップを握って今度は大通りまで。
体力がある分だけ労働も人一倍。
部屋に戻る頃、拓真もすっかり芯まで冷えてしまっていた。

炬燵で昼食を済ませ、まだ明るいうちから薄着で寝床へ。
人肌に安堵して今さっきまで夢の中。
見透かされていた通りだ、独りでなくて良かった。


「……したくなったんですか?」

ただし、遼二の方は別の意味として受け取ったらしい。
振り向き様に視線で射られた。

寝癖で更に乱れた柔らかい髪。
眼鏡は枕元に畳まれて、無防備に素顔を晒したまま。
すぐ間近にレンズを隔てない黒目。
冷めているような、眠そうな、綺麗でも底が見えない。

吸い込まれて沈みそうな色に、内側から胸を叩かれる。
違うとは言えなくなってしまった。


唇が欲しくて遼二に頬を寄せたら、毛布の奥へ潜ってしまった。
避けられた事に少なからず苦い気持ち。
此の状況で煽っておいてそれはあんまりでないだろうか。

そう思ったのも束の間、細い指が下腹部に這わされる。
何の為だったのか悟った拓真が上半身を起こす。

「ちょ、早未……そっちじゃ……ッ!」
「五月蝿いですよ。」

遼二の言葉はただそれだけ。
下着ごとスウエットを引かれ、拓真は膝まで一気に守りを失う。
狭い布の間、舌舐め擦りが聴こえた気がした。
項垂れていた性器に唇が落とされる。


陽が傾いても外はまだ明るい時間帯。
半開きのカーテンで薄暗い部屋、微かな水音は甘く。

辛うじて目に届くのは、拓真の下腹部に埋まった頭のみ。
此の毛布を捲ればはっきりと見えるのに。
遼二だって息苦しい筈なのに、痴態を晒す事を拒むような真似。

男が好きだと言うだけあって、無理している素振りは無い。
まるで飴の塊にでも食い付くように。
丁寧に絡めた舌で熱を上げ、唾液と混ざり合う雫を啜る。
美味そうに咥える音が何よりも背筋を弄った。

「……あ……ッ、く、うぅ……!」

こう云う時、情けなく声を漏らしてしまうのは拓真の方。
吐き出した白濁は降伏の証。
冷徹なほど最後まで無言を保つ遼二に呑み込まれる。

どれだけ溢れても舐め取って名残惜しげに。
やっと此方を見上げると、糸を紡いだ唇が薄く笑った。


すぐ冷める性質である男の身体が、生々しさに火照る。
けれど呆けている場合にあらず。
どんなに勝てない相手であっても、それだけで終われない。

やや強引に遼二を引っ張り起こして、シーツの上で向かい合わせ。
座り込んだ拓真の脚を膝立ちに跨がせる格好。
頑なに脱がないパジャマの下から手を潜り込ませた。
今度は此方から愛でる番。

ただでさえ無骨な指は水仕事で荒れ気味。
あまり器用そうに見えないが、コックコートに着替えると化ける。
作り出すケーキの数々は意外なほど華やか。

今だって、ゆっくりと細やかに。
汗で湿っていた大きな手は薄い肌を温める。


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2014.02.21