林檎に牙を:全5種類
*R指定描写(♀×♂)

メインカプ二組目。
この二人は病的なくらいで丁度良いような気がする。
アホアホしいギャグも書けるんだけども。
死を覚悟した刃によって背後を斬り付けられた感覚。
物ともせず、振り返り様に分身が相手を薙ぎ払うと同時に戦いは終わった。
動く物が居なくなった事は遠くからでも確認できる。
見えない糸を繰る指先を止め、腰を上げた。
地獄へと赴く為に。



余りにも青い空の下に広がるのは、常人なら吐き気を催す光景。

先程まで起こっていた事は戦いと云うよりも、一方的な虐殺でしかないだろう。
転がる肉塊、飛び散る臓物、溢れた血。
やがて獣の餌になり、残骸は土に返り、時の流れのままに。
無情な程に暖かく明るい陽光に晒された全ては平等。
そんな中で、幾つもの異様な影が地に伸びる。

後頭部を砕かれ、刃が腹を貫き、それでも背筋を伸ばして目を開く。
身体を濡らす深紅は自身の物ではない。
生身の人間にしか見えない姿をした、精巧な人形。
頑丈な身体と怪力を持ち、気候や環境にも左右されず、感情も容赦も無く屠る。
人形に於いて高い性能を誇る一団"臥龍"の兵器型。
善行も悪行も金銭次第で動く彼らと対峙したのが運の尽き。
片や、相手は己の快楽の為だけに策も無いまま人間を襲っていたような連中だ。
勝ち目など元からある筈が無い。

ただ、此れだけは例外だろう。
人形のうちの一体が地面に崩れ、ずるり、と"本体"が身を起こした。
其れは蛹から抜ける蝶を思わせる光景。

尤も、細い身に纏うのは羽などではなく深緑のストール。
金茶の髪を靡かせた長身の青年が現われる。
優男とも云える甘い風貌だが、冷たく厭らしさを感じさせる翠の瞳。
そして、突き出た二本の角と尖った耳は人間にあらず。


「あれ、深砂ちゃん迎えに来てくれたの?」

そこまで親切ではないと判っている癖に、青年は口許を綻ばせる。
声を掛けられた若い女性は吊り気味の大きな目を向けるのみ。
肩で跳ねる赤い髪が、儚さを感じさせる程の白い肌を彩っている。
思い起こされるのは燃え盛る炎ではない。
熱を失って乾き掛けた、血の色。

「和磨君は無駄な動き多いよ、確実に首か胸狙わないと駄目だって。」
「故意だよ、一撃だとつまらないじゃないか。」
「殺すじゃない、結局。」
「だって面白かったよ、目瞑って叫び声上げて突っ込んで来て……馬鹿だよねぇ。」

深砂の声は批難ではなく、ただ淡々とした低音。
一方、残酷な笑いを小さく零していた和磨はストールを翻した。
手近な岩に腰を下ろし、小柄な彼女と同じ目の高さ。
僅か上体を倒すだけで触れる距離。
視線が絡めば、身構える間も与えられない。


「……ねぇ、しようよ。」

抗えない男の力を以って伸ばされた腕。
誘う声は既に濡れている。
捕獲の瞬間、深砂の表情は静かなまま睫毛だけが微か震えた。

「わざわざ来てくれたって事は、"そう"だと思って良いんだよね?」
「……変態。」

暗い紫をした深砂の上衣を留めるのは、結ばれた蝶々だけ。
今にも捻り散らしかねない和磨の手。
離す意思の無い強さで握り締め、深砂から退路を断つ。
問い掛けには答えずとも道は一つ。
間を置かず、蝶々はだらしない二本の紐へと姿を変えた。




本来なら防寒の役目を持つストールは場所によっては敷布になる。
何度洗っても、他人には判り難い内側に新たな体液の染み。
寝床以外での睦言は既に慣れつつあった。
地に広げられた深緑の波間、横たわった身体は濡れ始める。


「口の利き方が成ってないね、和磨君……して欲しい、でしょ?」
「ごめん、なさい……」

深い接吻の合間で交わす言葉。
先程までの気障りな気配など、今の和磨には見る影さえも無い。
覆い被さる深砂は彼を従順に変える唯一の存在。
衣服を捲り上げた肌を辿る舌先の桃色。
剥き出しになった柔らかい場所を噛めば、押し殺した声が甘く泣いた。


乱れた上衣から零れる乳房、白かった肌に熱が燈るのは深砂も同じ。
下腹部を包んで撫でていた片手を離した。
指先から滴る雫、目の前で舐め取ってみせるのは余裕の表れ。

「こんな所でなんてね……此処がどれだけおぞましいか、見える?」
「……深砂ちゃんしか見えないよ、僕には。」


髪を掴んで問えば、僅かに残る理性と屈辱で声が歪む。
そんな物は今は必要無い。
濡れて糸を引く下着を腿まで滑らせ、腹を跨いだ膝立ちになる。

押し当てた先端で抉じ開けた入り口。
息を呑んだ愛しい男を見下ろして、仄暗い笑みは限りなく優しく。


「おいで?」




黙って行為を見つめるのは白濁した虚ろな目玉。
背に感じても、深砂は昂ぶる趣味を持ち合わせている訳ではない。
此れはただの死者への冒涜。
彼らと同じく地獄に堕ちるだろう、きっと。

不老長寿の自分達とは云えども必ずしも遠い話などではない。
刃を握って良いのは斬られる覚悟がある者だけなのだ。
其れは罰ではなく摂理だと深砂には判っている。
けれど、和磨は殺される覚悟を持っているだろうか。
圧倒的な力を戯れ半分で振り翳し、死が遠い物だと信じて疑っちゃいない。

なんて愚かで可愛い人。



眼下に在る物は唯一つ。
思考さえ真っ白に蕩けた甲高い嬌声だけ。


欲してくれるのならば容赦無く壊してあげる。
其れは他ならぬ貴方の意思。
全て委ねて、何もかも捨ててしまいなさい。


「良いよ、どんなに狂っても……私だけが愛してあげる。」
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2009.02.11