林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)

棒を吐き出した後も、まだ果実は消えない。
冷えた唇を濡らした雫の味。
呼吸が絡み合えば、橙色を上書きした赤紫の香り。
そう深くもないキスでも芯を熱くさせて、媚薬を思わせる。

膝立ちの遼二に圧し掛かられて、腕を回して支えた。
柔らかい黒髪と硬い細身。
体温が上がった今は、どちらも指先に湿り気を伝える。

此れから更に熱くなるのだ、衣服は邪魔なだけ。
先程の事があるので拓真としては不本意だったが仕方ない。
遼二のTシャツに無骨な手を滑り込ませた。
汗で貼り付く布は果実の皮を剥くより困難かもしれない。
少し強く引っ張り上げてやれば、暑さと欲情の匂いが一瞬だけ弾けた。


拓真も後ろ手にシャツを捲られ、広い背中に扇風機の風を受けた。
じっとり浮いていた汗の所為で酷く冷たくなる。
旋回する羽はほとんど音がせずとも、無言になれば耳の奥で低く響き続ける。

決して声を上げようとしない遼二との情交は密やか。
息遣いが淡く色付いた静寂。

こうしてキスを重ねている時以外、ほぼ閉ざれてしまう唇。
鍵なんて掛からないのに解く術を拓真は知らない。
啼かせてみたいと思っても、欲望のまま振舞う気はなかった。
いつだって壊れ物の如く遼二を扱う。

インドアの遼二は骨からして華奢。
女と違っても、未成年の肌は瑞々しく筋肉も薄い。
一回り年上で格闘家だった自分と比べるとますます際立つ。

桃色の差し始めた素肌は果実を思わせる。
唾液が溢れるまま、仄白く平たい胸に吸い付いた。
舌を這わすだけで痕は残さず。
歯なんて立てたら容易く破れてしまいそうで。


不意に、下腹部を探られて拓真が危うく声を上げるところだった。
否、掴まれたと云った方が近いかもしれない。
既に熱くなった屹立に絡んだ遼二の手。
そうして、今度はキスで開かれた唇で包んでくる。

顔を埋める前の一瞬、何故か睨まれた気がした。
最中にそんな表情をされる覚えがない。
眼鏡を外しているので、ただ見え難いだけかもしれないが。


拓真から強制した事なんて一度だって無い。
寧ろ、いつも遼二の方が進んで口腔に含んでくる。
単に男が好きなだけの理由。
相手に快楽を与えたいのではなくて、自分の為。

流石に今日は汗を掻いた後なので抵抗があった。
ただでさえ余裕が無くなるので、追い詰められると云うのに。
それでも、逃げ腰になる拓真などお構いなし。

しばらく口一杯に頬張ってから、息継ぎで解放する。
切っ先から引く糸が生々しい。
遼二の好きにさせていると、左手で擦り上げながら軽く咥え直される。
髪を乱してまで啜る表情は蕩けて甘く。

もう一方、彼の利き手はローションを垂らして水浸し。
入口を慣らす為の指遊び。
まだ開発中の身体は準備で慎重になる。

拓真が弄ろうとするよりも先に伸びていった手。
待てないほど戦慄いているのだろう。


身体を起こすタイミングは思ったより早く。
生殺しで口から放されると、器用な指によってゴムで包まれた。
持ち上がった細い腰が切っ先を宛がう。

遼二に身を任せているのは、拓真自身の為でない。
苦痛は短い方が良いだろうから。


長座布団に裸のまま座り込んで、向かい合わせ。
ゆっくりと狭い部分に侵入していく。
沈み込んでいくたび、眼前で遼二の涼しい面差しが歪む。
拓真の頑丈な肩に爪を立てながら荒い呼吸。

指なら感じるようになってきても、桁違いの息苦しさ。
叫んだ方が楽だろうに声を殺す。

やっとの思いで全て埋まる頃には腕の中で弛緩した状態。
薄くても硬い男の身体、そう簡単に壊れやしない。
解かっていても、突き上げる事など出来ず。
抱き竦めて揺らすだけで充分だった。

痛みに耐える様が愛しい。
頬を濡らす涙すら蜜のようで、舌で掬い取る。


「どうせなら、噛んで下さい。」

長い無言を破って、囁かれた。
今まで泣いていたくせに何を言い出すのだろう。

拓真の首を細い肩に寄せ、聞き違いでないと証明する。
此処に歯を立ててみろと。
困惑するばかりでも、恐る恐る口を開けて従えば。

「まだ、足りない……もっと強く。」
「何だよ……、痛いんだろ?」
「だって……保志さん弱すぎ、痕付けてくれなきゃ。」
「いや、お前な……」

切れ切れに強請る遼二の眼は、相変わらず涙を溜めて。
しかし、恍惚の色もまた確かにあった。
痛みが好きな訳ではないだろうに。
真夏の湿度と情交、熱に浮かされて思考が麻痺しているのか。

傷付けないよう拓真は丁寧に扱ってきたつもりなのだが。
それが物足りないとしたら、何て贅沢な。


「……覚悟しろよ。」

自分で吐き出した台詞で、すぐに火照る。
行動に伴わなければ痛手として却ってきてしまう。
こんな時でもない限り言えやしない。

遼二にも薄く笑われ、顔を見られたくなくて強めに噛み付いた。
お望み通りならば文句もあるまい。
加減しつつもそのまま牙が食い込めば変化は確かに。
頑なに啼かなかった喉が、微かな音を零した。

食べてしまいたいなんて言えるほど凶暴にはなれない。
遼二が選んだのはそう云う男だ。

けれど、美味そうだと思ったのは本音。

事実、今の遼二はまるで果実を思わせた。
身体の中心を刀身で抉られて、ローションが水音を混ぜる。
噛むのを止めて浅い傷口を舐めると甘い気がした。
熟すように焦がされる午後、麗しい幻。


*end


← BACK



*クリックで応援お願いします

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


小説(BL) ブログランキングへ


スポンサーサイト

2014.08.23