林檎に牙を:全5種類
*R指定描写(♀×♂)

此の二人は間違いなく赤い糸です。
ただ互いの小指に辿り着く前に、和磨の首にも絡まっているんだと思う。
束縛する首輪なのか、深砂が手繰り寄せたら首が落ちるか、両方か。
でも、それが本人達だけの幸福。
お砂糖、スパイス、素敵な物いっぱい。
女の子は其れらで出来ていると有名な詩人は詠った。
なのだが、男の和磨にも砂糖は使われていると深砂は思う。
それでなければこんなに甘い筈が無い。

ストールを奪うと、和磨の首は仄かな果実に似た香り。
舌を這わせる妄想を誘われ、深砂の口腔に唾液がじわり湧いた。
綺麗に包まれたお菓子の包装を解く気分。



布に護られていたお陰で、擦り込まれていた芳香は未だに保たれたまま。
半日経過しても情交の熱で蘇る。
ただでさえ陽に焼けない和磨は淡い桃色を溶かした肌。
けれど深砂もまた劣らず透けそうに白く。
縁が染まれば、鋭い吊り眼も僅かに柔らかくなる。
ベッドサイドに膝を折って寝転ぶ、無抵抗な男の身体を前にして。

深砂が座り込んでいる冷たい床は、和磨の足元の辺り。
此処からだと強張りを差し出された形。
声が欲しくて、重く実った乳房で挟み込んだ。
普段は邪魔な大きさでも、啼かせるには役に立つ。

触れ合いそうな近さになった薄紅の尖りは、谷間の茎を隔てて。
寄せた隙から覗く先端にも舌を伸ばす。


蚊帳付きの紫檀のベッドは眠りよりも情欲を誘われる。
上から流れる薄いレースのカーテンは一年中掛けられたまま。
嬌声を柔らかく包んで、熱を煽る物。

アンバーの香水を垂らした夜の部屋。
香辛料に似た甘い空気に呼吸を乱され、気付けば胸に満ちている。

此れは龍である二人にとって媚薬。
特に半分人間の深砂より角を持つ和磨に良く効く。
そうでなくとも、匂いにも快楽にも敏感なのだから堪るまい。
嗚咽に似た声が甘い。
逆らい難い官能で煮立つ血に苦しむだけ。

伝わる脈動を感じて乳房を離すと、今度は口腔の奥まで。
間も無くして沸点、生温かな白濁が溢れる。

決して美味しいとは感じないけれど、先程から何度も呑み込んできた。
甘い砂糖も煮詰めすぎれば毒のように苦くなる。
多分、そう云う味なのだ。
そして自分の一部となると思えば愛おしく、深砂には吐き出せない。

もっと深く味わいたい欲求。
糸を引く唇を拭った深砂の手が、避妊具の包みを破いた。


首から剥がされたストールも使い道はある。
照明を落とした部屋、手探りで柔らかい布を拾った。
左右の手で端を片方ずつ持ち上げて。

訝しんだ和磨がベッドから上体を起こし掛けても、途中で止まる。
肘を着いたまま肩が浮く角度。
首の後ろに廻されたストールに支えられている所為。
目線を固定されている和磨が見上げる先には、彼を跨ぐ深砂。
張った布の両端を拳に巻き付けて。

丁度、手綱を握るように。


不安定な体勢で和磨には辛い事も承知の上。
悪いと思いつつも、此れで良いのだ。

腹の上に乗れば、聳え立つ先端が押し当たる。
蕩けた花弁の開かれる蜜の音。
膝立ちの腰をゆっくりと落として、奥へ。



華奢な男とは云えども力で敵う筈がない。
長身の和磨と比べれば、小柄な深砂とは大人と子供程の差。

それでも絶対的に優位な立場は彼女の方。
跨るにも堂々立て膝。
白く細い手に布を握り締めて、易々と繰る。
手綱と腰を引けば、人形に狂気を注いできた男は淫らに啼いた。

今の和磨に、他者を踏み付ける冷淡さは面影も無い。
高い自尊心を持つ美貌も形振り構わず、全てを委ねるままに。


汗ばんだ肌に張り付く、丁寧に整えられていた柔らかな巻き毛。
薄闇の中で乱れ散った金茶は艶やかに光を持つ。
歪んだ薄い唇から流れる悲鳴は終わらない。
シーツに爪を立てる長い指。
小さな抵抗も、仔猫を思わせる程度にしかならず。

溶け落ちそうに潤んだ翠の双眸。
手綱で此方へ引き寄せ、深砂の舌先が塩辛く濡れた睫毛を拭う。

情交の際、和磨の泣き方は生理的な物には見えない。
哀しみに押し潰されたかのような涙に打ち震え、綺麗な顔を崩す。
此の表情が何よりも深砂を高める。
可愛くて、堪らない。


支配の恍惚に身体を揺らして唇を重ねた。
其の気ならば首を締める事だって出来る、此の侭。

「私は和磨君を愛する為に生まれてきたんだからね?」

至近距離、絡んだ舌先に繋がる銀の糸。
囁いた後で肩に鋭く歯を立てた。
噛み千切りたい願望は今日も妄想止まり。

果てる声も、滲んだ血も、体液と混じる香りも。
全てが極上に甘く。
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2010.05.15