林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)
藍色を結えばの続きです。
「解いて終わり」と遼二に提案され、席を立ったのは自分の意志。
子供じゃあるまいし意図を読み違えたりしない。
飲み干したコーヒーで腹を温めてから、拓真は遼二と共に喫茶店を出た。
もっと奥、身体の芯に熱を与えられて。


馴染みの無い土地だが、脱ぐ為のホテルは店の近くにひっそり建っていた。
情交はいつも拓真の家と決まっていたので今日だけ特別。
待てなかった、と口にする度胸など無いまま。

ただでさえ入り難い場所なのに、男二人でなんて足が進まず。
両者スーツで無駄に堅い格好をしているだけに気恥ずかしさも割増。
不安げな表情でいたら、遼二に薄く笑われてしまった。
部屋に辿り着くまで無人で済んだのは幸い。


まだ明るい外と違って、窓が無い部屋の中は夜だった。
暗い室内に橙色のベッドランプ。

「皺になるから脱いで下さいね?」

飽くまでも柔らかな強要。
正論で突き付けられたら、拓真は何も言い返せなくなる。

どうも強張り気味な拓真に代わって、遼二の方が命じる側。
癖っ毛をワックスで整えて少し大人びて見える表情。
ランプは大きく濃い影を映し出し、眠そうな眼も艶めかせる。

ジャケットは簡単に袖から腕が抜けた。
遼二が見ている前でベルトを外すのは気が引けるが、恥じらうのも今更。
脱がされないだけまだ良いと自分に言い聞かせるしかあらず。
そうして奪われた上下は軽く畳んで椅子に掛けられた。


遼二が胸を押したら、無抵抗のままベッドに仰向け。
細身に乗られて大柄な拓真がシーツに沈む。

シャツとネクタイは無事でも、腰は下着のみで情けない格好。
せめてもの一矢と拓真が静かに伸ばした指先。
遼二の喉元、青い結び目を掴んだ。
元から緩んでいたのだ、握り潰すまでもなくするりと細い布に変わる。

ネクタイを解く役目は拓真だと決まっていた。
為されるがままの現状に逆らった訳でなく、約束を果たしたに過ぎない。
それでも、無防備になった華奢な首に高揚した。


一方、遼二の手には迷いが無い。
遅れてから自分のも解こうとするより先、拓真の結び目は細い指が絡んだ。
堅めに結んだ筈でも上手はあちら。
ネクタイを引き抜けば、次はシャツのボタンまで外しに掛かる。

心臓に近い第二ボタンを摘まむ指先。
毟り取られやしないかと、実のところ拓真は一瞬だけ怯えた。
とっくに心奪われているのに。



此処は情交の場所、必要な物なら使い捨てでベッドサイドに揃っている。
封を切れば、薔薇の香りが粘着いた。
いつも遼二が使っているボトルのローションと違う。
甘ったるく鼻先に絡んできて離れず、酔ってしまいそうな気分。

ローションで濡れた遼二の指。
シャツ一枚の姿で見せつけるように自分で後ろを弄り、水音で開く。

触れて、舐めて、素肌を散々愛でられたのは拓真の方。
裸のままで何もさせてもらえやしない。
仰向けで両手首は頭の上、ネクタイで縛られるとは思わなかった。

加虐趣味があるのか、遼二はやたらと主導権を欲しがる。
確かに普段の冷ややかさを思えば納得出来た。

ならば本当は拓真が受け入れる側であるべきだろうか。
けれど初めて身体を繋げた時、「それは嫌だ」と返されたのを覚えている。
何かしら考えや拘りがあるのかもしれないが、理解出来ない。


上になっている遼二は眼鏡を外す必要が無い。
はっきりと熱に潤んだ眼で見下ろされれば、背筋が痺れるほど。

指を抜いたらゴムで包んだ切っ先の番。
ベッドに倒れたままの拓真に跨り、腰を沈めていく。
奥歯をきつく噛んで、ゆっくりと。

根元まで埋まって互いに息を整えたら、噎せ返る薔薇。
汗ばんだ男の匂いが生々しく混ざる。


筋肉の薄い腕に引っ張られたのは不意の事。
意表を突かれて強引に、拓真が上半身を起こされた。
手首の戒めも呆気なく解放される。

「身体支えてないとキツいでしょうからね……」

手錠になっていたネクタイを垂らして、遼二が低く呟く。
両端ずつ左右の手に巻き付けながら。
何の為かは訊くまでもなかった。
拓真の首の後ろへ廻して引っ掛け、きゅっと細い布が張る。

立て膝になった遼二が、拓真の手綱を握る形。


忠告通り慌てて両肘をシーツに着いて、何とか肩を浮かせた。
遼二の腿を掴み、まるで縋り付くように。
ふとした時に首まで締まりそうで、体裁が悪くても構ってられず。

拓真の恐れは表情に出ていたらしい。
杭を打たれた圧迫感にも慣れ始めた遼二が加虐的に笑う。
陰影の濃さで妖しく艶を増す。
目を奪われ、ただそれだけで血が沸き立った。

もう生かすも殺すも遼二次第。
彼が身体を後ろに反らせれば、更に深く繋がって。
支配されるまま拓真は声を上げた。


きっと部屋を後にする頃、拓真の首に赤い痕が残っているだろう。
此の時間が終わっても服従した証は消えない。

夢ではないと、嘘ではないのだと。

けれど、一方的な暴虐を受けている訳でもあらず。
伸ばした手で遼二の顔を引き寄せる。
何処か冷えた視線に至近距離で刺されつつ、眼鏡を外す。


引き結んだ唇に愛を強請っても無駄。
喘ぎ一つ零してくれない。

それなら、せめてもっと触れて欲しいと。
好きにされても良いから。
懇願する気持ちで、下僕は若い主人に口付けた。



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2014.10.17