林檎に牙を:全5種類
進之助と和磨の主従による連載です。
今回は序章。

配布元alkalism様より。
小さく区切られて真綿の敷き詰められた、箱の中。
覗き込んだ者は誰もが眼を細めるだろう。
柔らかな白に包まれて眠るのは、眩しい程の色彩様々。
冷たい光を持つ、沢山の貴石や半貴石。

しかし、此れは只の宝石箱などではない。

一つ一つが悲劇の運命を辿った魂。
死後も天に昇る事すら叶わなかった者達の、成れの果て。
行き場を無くして石に宿った彼ら。
そうして、人々は其れを"魂石"と呼ぶ。



「で、君はどんな悲劇を見たんだい?」


摘み上げた石を掌で転がしながら和磨は呟いた。
呼び掛けは独り言、返事など期待せずに。

此れは決して目立つ物ではなかった。
種類も大きさも違う石達は妖しいまでに美しく輝く。
だからこそ惹かれたのかもしれない。
眼を灼く鮮烈な色の中で一滴、不透明な漆黒。

眠りを誘う夜の色。
飴玉程の球体に磨かれた、黒瑪瑙。


「決めた、僕は此れを貰うよ。」



魂石は持ち主を選ぶ。
出逢う事で心残りを無くしてくれる、運命の相手を。
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2010.07.06