林檎に牙を:全5種類
制服が学ランなら、休日くらい別の色を纏っても良いのに。
どうも忠臣の私服は地味なモノクロが多い。
昔からの付き合い、青葉が覚えている限り似たような格好ばかり。

「変わり映えなさすぎだよね。」
「だから買いに来たんだろ、今日。」

お洒落着の青葉が思わず一言洩らしたら、真っ黒な忠臣は顰め面。
よく晴れて暖かなお出掛け日和。
週末のショッピングモールは何処も人が溢れていた。
連れ立って、服屋が並ぶ階へ。


わざわざ二人で予定を立てて遊びに来た訳ではない。
週末に買い物があると忠臣が言うので、丁度用があった青葉も便乗しただけ。

忠臣が本以外の物を欲しがるのも何だか珍しくて。
懐が温まると書店へ直行、読書コーナーがあれば何時間でも居る。
それこそマイナーな漫画から文豪の小説まで。
生真面目なので基本的に無駄遣いしない。
寧ろ、他の遊びや食べ物に関しては「何でも良い」の姿勢。

「どったの、急にお洒落に目覚めたりして。」
「古い服処分したら、箪笥の中身減っただけデスよ。」

好きな服を買えと親から代金を渡されたらしい。
子供の頃なら兎も角、上が姉ではお古を着る訳にもいかず。

成長期なので、いつまでも同じ物ばかり着ていられない。
これから高校生に掛けて忠臣もまだ伸びてくる頃。
お気に入りの服とも別れを繰り返す。


放っておいたら似た物ばかり選びそうだ。
また黒ばかりにならないようにと、青葉が同行したのは心配もあって。
差し色があるだけでもかなり変わる。
ベースがモノクロなら、何が加わっても合うだろうに。

青葉も青葉で、服装についてあまり偉そうな事は言えないが。
好きな服を選べるようになったのは中学校から。

名前が"青葉"なので、親に着せられる服はどれもこれも青や緑だった。
アルバムを開けばほとんど寒色。
ブルーとピンクで一対の小物があると妹と分け合い。
別に嫌いでないにしろ、本当はピンクの方が好きだったのに。

縁遠いからこそ可愛い物に対する憧れは多少ある。
今でこそさりげなく所持する程度なら、誰の目も気にせず。


さて、それにしても何処で買うべきか。

全体的に服屋はレディースの方が圧倒的に多い。
両方扱っている店でもメンズは片隅に三分の一程度。
無難なところで立ち寄って手にとっては、すぐに戻してしまう。
どうやら忠臣が欲しいのはパーカーらしい。

「そーゆーのが良いなら、僕がよく行く店にもあるよ?」

忠臣が顔を上げたら移動する合図。
エスカレーターを上ればウサギだらけ、目当ての店は此処に。


青葉の好きな「Bugsy」はユニセックスブランド。
普段着からちょっとしたお洒落まで揃うカジュアル志向だった。
目を引くのはマスコットのウサギ。
大きなプリントから小さなワンポイントまで、あちこちに存在感。

青葉がよく羽織っているグレーのパーカーも。
ピンクを差し色にすると相性が良いのでお気に入りだった。

「あぁ、あんな耳生えた服とか何処で買ってくるのかと思ってたら……」
「OK、耳無しなら良いんでしょ?」

呆れ顔をしつつも、忠臣は躊躇わずに足を踏み入れた。
常連なので売り場は熟知しているのだ。
黒い袖を引っ張るまでもなく、青葉が案内する。

ウサギに連れられて、不思議な場所へ。
ふとアリスの冒頭を思い出した。


ただでさえお洒落と無縁の上、初めての店で忠臣は落ち着かない様子。
試しで連れてきただけなので趣味に合わなければ再び移動しよう。
青葉はそう考えていたが、どうやらその必要も無くなった。

あれこれ手に取って悩んでいた後姿も、やがて止まる。
ネイビーに刺繍でオレンジのウサギ。
補色同士なので引き立て合って、地味すぎず派手すぎず。
フードに耳が無いのをよく確認した上で。

「ありがとうございました。」

レジの店員に見送られて立ち去る。
そうして忠臣が提げた袋に、ウサギが一羽。


「ねぇ忠臣、また遊ぶ時それ着て来てよ。」

少し訝しんでも、きっと単純な忠臣は言葉に従うだろう。
あのパーカーはなかなか良いデザインで売れ筋。
青葉も色違いで持っているとは黙っておく事にした。
新作で出たばかりの頃に入手した、ライムとピーチの取り合わせ。

「オイ、何笑ってんデスか青葉?」
「いや、別に?」

その時に自分も着て来て明かそうか、内緒のままか。
考えるだけで何だか楽しい。
驚かせるのも平穏を保つのも、それは青葉次第。



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2015.02.16