林檎に牙を:全5種類


(title&illustration by ういちろさん/novel by 朔花)
獰猛な獣に喰い付かれて、床の上。
抉じ開けられるまでもなく口唇を開いて牙を迎える。

焦点が歪む直前まで梅丸は薄目で嵐山を盗み見ていた。
睫毛の揃った瞼を閉ざして、憂き目を帯びた表情。
自分から欲しがったくせに。
そう思いつつも、その苦味から滲んだ艶に心奪われた。


梅丸の左手は身体を支える為。
一方、右手は糸で吊るされたように中空に浮いたまま。

さて、此の後どうしようか。

本当なら行き場が無い訳じゃない。
相手の背中を抱くなり、頬に撫でるなり方法など幾らでもある。
けれど、それは恋人同士での話。

何度嵐山に噛み付かれようと梅丸はただされるが侭。
初恋だったと告白しても、それは少女だと思っていた頃の事。
愛らしい容姿にコンプレックスを持つ彼を激情させた。
それから続く、獣と獲物の距離。


貪られる最中、梅丸に鋭く痛みが走る。
牙を立てられた唇がとうとう切れてしまった。
溢れた血は、息継ぎで剥がれた嵐山の唇も染めて真っ赤。
それも一瞬の事。
無造作な舌舐め擦りで色は拭われ、獣は鉄錆を味わう。

静かに見惚れていた梅丸の傷から、熱が疼き出す。
そう、それで良い。
きっと甘く蕩けるだけのキスでは満たされない。


苦痛を与える方法でしか愛せない獣は傷付いていた。
怒らせて酷い事をされたい獲物の欲を知らず。
加虐と被虐が交差する二人遊び。
本心を吐き合って終わらせてしまうのは、まだ惜しかった。

執着と愛は似て非なるものだと云う。

しかし此れが愛でなければ、他の誰も好きになれはしない。
こんな感情を抱く相手などただ一人。



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2015.07.05