林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)

最近、梅丸に対する”呼び出し”の合図が随分と乱暴になった。
帰宅で引き上げる際、前の席から椅子の背を机にぶつけてくるのだ。
爪の先で叩けば充分だと知っているのに。

不機嫌そうな嵐山は後姿だけでも刺々しい。
喜んだり楽しんでいる時は表情すらあまり変わらないのに。


「なぁ……、今、何考えてるんだよ?」
「……お前のことに決まってるべ。」

嘘でもないのに返答に何の不満があったのだか。
自分の肩越しに、睨むような嵐山の眼。
突き立てられていた指に内壁を擦り上げられ、梅丸は奥歯を噛む。

いつもの場所、旧校舎の最上階で。


上から下まで制服を捲られ、ほとんど裸。
背後から弄られている格好は情けないほど羞恥的。
嵐山だけ留め金を緩める程度なので尚更に。

梅丸自身はそれほど嫌でもなく、命令なら従うまで。
それで機嫌が直るならと思ったのだが。

「どうだか、カラオケの練習付き合えば良かったとか思ってないか?」

情交の最中にも関わらず、嵐山は突き放す物言い。
苛立っている理由。


王林中学校では、三年生がステージに上がるカラオケ大会がある。
本来なら梅丸は観客だったのだが、友人達に誘われて出場する事になった。
曲に合わせてコスプレするほど気合の入りぶりで。

練習や衣装制作で週末にメンバーで集まったら、月曜に嵐山から睨まれた。
放ったらかしにしていたのがお気に召さなかったらしい。
そもそも、彼以外と遊べば毎回こうなのだ。
それでこそとも云うべきか、嫉妬深いところは幼い頃から変わってない。


「痛……ッてぇ……!」

獣に牙を立てられて、肩が焼ける感覚。
滲んだ血で鉄錆の混ざった吐息が生傷を撫でる。
上がっていた熱は痛みで沸点を越えた。


「……不味い。」

肩の血を舐め取って、嵐山が毒づく。
自分から噛み付いたくせに何て言い草か。

反論なんて頭の中だけ、梅丸は大人しく歯型の傷をシャツで隠した。
絆創膏も無しに羽織ったので、きっと染みになってしまう。
熱が引いたら黙々と制服を直す。

梅丸の蕾に指を埋め込む間、もう片手は自分の刀身を擦り上げていたのだ。
嵐山も粘着く白濁を拭って今日はおしまい。


「何だよ梅丸……、不満そうだな。」
「……えっ。」

返答に詰まったのは、動揺したからではない。
それは此方の台詞だ。

月曜から放課後だけは嵐山の方を優先してきた。
勿論、部活もカラオケもそっちのけで。
それでも気が済まないらしい。
情交は梅丸の身体に触れたり噛み付くだけで、交わらず終わる。

意図的に焦らされている。
梅丸だってそこまで鈍くない、しかし強請りも出来ず。

乙女でもあるまいし恥ずかしい訳ではない。
欲しがる事を嵐山が待っているのは知っている。
ただ、どんな方法なら納得するのやら。




「放送禁止用語で強請られたら逆にドン引きしねぇ?」
「そんな繊細な男、エロ本に出てきマセンよ。」
「てゆかさ梅さんならドン引くって話だよね、それって。」

朝陽で緑が輝く裏庭、似つかわしくない会話に花が咲く。

翌日、自転車置き場で顔を合わせた忠臣と青葉に話を振ってみた。
昇降口に向かうまで、三人だけの短いお喋り。
思春期の男子が揃えば珍しくもなし。
嵐山の事は伏せ、飽くまでも「読んだ本」として。


実際、そうしたシーンは成人誌を捲れば幾らでもある。
そして強請る方法も卑猥な台詞ばかり。

嵐山が相手では、きっと要求に答えてくれない。
獣のくせに知性の無い言葉を嫌うのだ。
単に下品な用語を並べただけでは、唾を吐かれるだけだろう。


「作品ってのは、作者が「こーゆーのでグッときます」の自己紹介らしいしさ。
 読み手はそれぞれなんだし、梅さんに合わなかっただけでしょ。」
「そうそう、「エロ本は教科書にするな」って、とある大人が言ってマシタし。」

何故か忠臣も青葉も知ったような口を利く。
とある大人、とは誰なのやら。
訊ねても「内緒」とはぐらかされてしまったけれど。

「そーゆーのが綺麗な世界で描かれてるのが良いなら、少女漫画でも読みなサイ。」
「あぁ、今のって過激なのも多いみたいだしね……」

本の話題は忠臣が饒舌になる。
ジャンルを問わず読み漁るので、手に取る時も偏見が無いらしい。
お勧めのタイトルを教えてくれたが上の空で聞き流した。


「あーね……、もう良いんさ。朝から悪かったんね。」

片手で打ち消して、猥談は終了。
ほとんど梅丸の勝手になってしまいつつも。

「少女漫画なら」で考えたら、妙にしっくりきて解かった。
嵐山が欲しいであろう言葉も。
忠臣に感謝しつつ、「今日こそは練習に来い」は聞こえないふり。


こうして密かに悩んでいても色情で頭が一杯とも違う。
挿入が無くても困らない、が正直な話。

指でも充分だが、それだけではなく。
嵐山から与えられる感覚で、身体に強烈な何かが欲しい。
それは快楽に限らず、痛みも射精を促す要素になる。

けれど、此のままでは自慰の延長に過ぎないから。




「あのさ……、ユウ……」
「何か言いたい事でも?」

放課後の情交はもはや日課。
四つん這いにされた身体を捻って、嵐山に片手を伸ばした。
夕陽で陰影の濃い顔は気圧されそうな冷気。

いざ口にするとなると言葉が縺れそうになる。
唇を舐めてから、吐き出した。


「……俺、お前と繋がってたい。」

低く濡れた声で降参を告げる。
もう此れで勘弁してくれないだろうか。


首の痛みを堪える最中、嵐山の表情が苦み走った。
それが何を意味するかは考えるまでもなく。
急に背中を押されて、梅丸の上半身が床に潰れる。

散々焦らされた双丘の奥、一息に刀身が貫く。

「言うのに何日掛かってるんだよ……、馬鹿。」
「あぁ……、悪ぃ……ッ……」

お許しが出て、やっと梅丸は下腹部の圧迫感を味わった。
気持ち良いだけなら自慰で事足りる。
それでは駄目なのだと、嵐山が欲しいのだと。
短い言葉では伝えきれずに身体が先走る。


それから、嵐山に言いたい事ならもう一つ。

「……自分から好き好んで挿入我慢するって、お前ドMなん?」

今日も肩に喰い付かれ、塞がった傷口が開く。
再び溢れる血の色。
かさぶたを剥がした唇に触れたら、鉄錆の味がするだろう。

もっと、もっと。
噛み痕を残して、痛みを刻み付けて。



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2015.07.20