林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)

閉め切った部屋の蒸し暑さはクーラーに鎮められていく。
嵐山の指先一つで、ベッドサイドのテーブルランプにも淡い灯りが宿った。
薄闇に隠れていた梅丸の肌を曝け出す。

浴衣なので左右に開かれれば下着一枚の半裸。
肩から布が抜ければ、ベッドの下へ落ちて見えなくなった。
奪われた帯は嵐山の手に。
組み敷いた体勢のまま見下ろす吊り目に、ランプの光が揺れる。

arashiyama04.jpg
illustration by ういちろさん

「よいではないかごっこでもするんかと思ったがね。」
「頭悪い事言うなよ。」

呆れ混じりの返答ながらも情欲が削がれた様子は無し。
下らない冗談でも笑い合えたら、もっと心が寄り添えた筈なのに。


帯は梅丸の手首を縛り、胸の前に。
たすき掛けをされた時から感じていた予感は的中した訳である。
それに拘束される事だって何も意外ではない。
初めて押し倒された時、ガムテープで同じようにされた。

今日も梅丸は別に抵抗などしない。
こんな物など要らないのだ、本当ならば。

けれど、いつか何処かで拒絶されてしまう事を恐れての用心か。
嵐山はまだ梅丸の想いを信じ切っていない。
それに加虐の性癖が足された結果。


さて此処には帯がもう一本ある。
湯上りなので嵐山も浴衣姿、そちらはまだ腰に結ばれていた。
ベッドの上でじゃれ合ううちに襟元が緩んできた程度。
拘束された梅丸の手には届かない。

梅丸から触れられる事を極力嫌がるのだ。
逆らうつもりなんてなくても、主導権は絶対的に嵐山。

それから、嵐山が肌を晒す事も滅多にしない。
学校では制服を崩す程度。
何も問題の無いベッドの上、今だって布が邪魔でも浴衣は捲るだけ。

同性だと身体の違いが歴然。
筋肉で締まった梅丸と比べれば、嵐山はまだ細身で小柄。
何よりも彼自身が過剰なほど気にする。
こうしたコンプレックスの面倒臭さは男も女も変わらないだろう。

梅丸の目からすれば確かに骨っぽくはなったと思うのだが。
浴衣が肌蹴た首筋や鎖骨、平たい胸に腹。
光量を最低限に落とされた部屋で、筋の陰影を映し出す。

口にしたところで「あまり見るな」と一蹴されてしまう。
相手に受け取る余裕が無ければ、誉め言葉も壁に叩き付けられて無残。


ランプは無言の静けさを張り詰めた物に見せる。
唇を引き結んだ嵐山の表情。
如何喰おうかと狙う獣になっていた。

縛られてベッドに転がされた梅丸は手も足も出ない。
ただ大人しく牙を待つだけ。


最初に喰らい付かれたのは、やはり唇から。
欲情が先立っては優しくなどない。
舌先で唾液を掻き混ぜる水音。
柔らかな部分を少し噛み切られたら、滲んだ血も混じって。

キス一つで随分と空気が変わるものだ。
熱が身体の芯を溶かして、夜の中に閉じ込められる。

流れ落ちる髪を摘まみ上げられたら耳まで齧る。
嵐山の息遣いに支配される聴覚。
背筋を震わせても碌に身動ぎ出来ず、結局は細い腕の中。



illustration by ういちろさん

乱暴な唇は点々と梅丸の肌を辿っていく。
浴衣の白梅を剥ぎ取られたと思いきや、次は紅が咲き乱れて。

学校は夏休みでクラスの誰とも会わない。
見られる恐れなど無いと、痛む程の強さで吸い付かれる。
前からこうしたかったのかもしれない。
嫉妬心で独占欲の激しい嵐山の事、お決まりな所有の証。

日々突き刺して来る陽射しの所為で、少し色の違う肌。
焼けた腕や首には痕もそうそう目立たない。
反面、普段布に守られている肩や腹の白さに紅は鮮やかに。

部活を引退した後だったのは梅丸にとって幸いだったろう。
着替えの時、他の部員に見つかる心配も無い。


胸元を噛まれる時は他の場所と違う。
帯で組まれた腕の間、自然と嵐山の頭を抱える形になる。
まるで、梅丸からせがんでいるような。
先端に歯を立てられても、まだくすぐったいばかりなのに。

体勢自体は悪くない。
何も出なくとも、嵐山が乳飲み子のようで可笑しみすらある。


「寝っ転がってるだけで良いのか……、楽してんなよ。」

不意に苛立った口調で、一際強く噛まれる。
未開発の胸でも流石に痛む。
そうして軽く怯んだ梅丸の口許にも、長い指を突き込まれた。

とげまるに懐かれて指先を舐められて、怒った嵐山にも齧られて。
どうしてか今度は梅丸が逆の立場。

林檎の皮を剥く間、細い指先に沁み込んでいた蜜。
もう残っているのは微かな香りだけ。
それでも味蕾を押されると、錯覚でも甘い気がした。

切られたばかりの唇では血が滲んで痛むが、それも構わずに。
根元まで丁寧に舌を這わせて唾液で濡れていく。
身体の中で指先は感覚が鋭い。
奉仕するつもりで、蜜の名残をしゃぶり尽くす。

此れが足指だったとしても、同じ事。
きっと跪いて口に含んでいた。


ふと上目で此方を窺ってきた嵐山と視線が交差する。

その瞬間、動揺が走ったのを梅丸は目にした。
何だ、やはりあちらも感じていたか。
もし自分が無表情でなければ、嗤っていたかもしれない。

「……もう良い、やめろ。」

努めて冷たく振舞う嵐山が、荒っぽく指を引き抜いた。
濃く絡んでいた唾液の糸を断ち切って。

しかし完全に消え去ってしまうのは惜しかった。
繋がれた両手を引き寄せれば、間にある嵐山の顔も一緒に。
追い縋るように、衝動的な行動。

初めて、梅丸の方から唇を重ねた。


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2015.10.04