林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)

面食らうか、怒って噛み付かれるか。
若しくは両方。

一寸先の事を予想した上で唇を吸った。
だから突き放されるとばかり思っていたのに。
梅丸からのキスに、嵐山は意外にも静かな態度で受け止めていた。

眩しげに目を細めた表情。
何を思って、此方を見ているのか読めやしない。


「……ユウ。」

凶暴な嵐山に対して梅丸に牙は無い。
獣が愛でるように舌先で撫でて、相手の名を啼いた。
掠れた声は儚い響き。
それでも感情は確かに込められて。

拘束された手を首に引っ掛けたまま、睨み合いは続く。

人形のような無反応ではないにしろ、いい加減に言葉の一つも欲しい。
いつもみたいに棘だらけでも構わないのに。


細身の嵐山には腕を回してもまだ余裕。
それならばとゆっくり下を目指して浴衣を滑り落ちる。
辿り着いたのは、腰で締められていた帯。
梅丸の指先が蝶々結びを散らせば、とうとう仄白い胸や腹が開かれた。

「何、そんなに僕にも脱いで欲しかった訳?」
「そりゃ、まぁ、そうだがね……」

抱き合っているので肌の質感こそ全身に伝わる。
しかし距離が近すぎて、見下ろしても梅丸の視界には届かず。
此方から引き上げるにはあまりにも惜しい。
腕の拘束も解いてくれたら、それで嵐山と対等になれるけれど。


そうして確かに嵐山の手は帯へ伸びた。
ただし、それは再び蝶を生む為。

「僕がお前の望む通りになると思ったら大間違い。」

腰から落ちたばかりの帯で、今度は梅丸に目隠しを施した。
視界が暗闇に包まれる一瞬前。
嵐山の目に宿っていた光が焼き付いた。
情欲で爛々としているのに、何処か悪戯っ子のような笑み。



ふと首筋の汗を舐め取られた。
吹きかかる吐息が熱くて、それだけで身を竦めてしまうのに。

既に嵐山は梅丸の腕から抜け出てしまった後。
一人きりで漆黒の中に閉じ込めていると、見知った物も正体不明に変わる。
舌先は生暖かなゼリー状の生き物。
ゆっくり這われれば、浸食されていくような錯覚すら。

無力のまま転がされているのは先程から同じ。
その上で視界まで奪われて、受け止める準備すら出来やしない。
音や匂い、触れられる感覚は一層鋭く。


倒錯はスパイスにも似て、刺激を伴った甘味。

そうした反応が嵐山の加虐心を煽っている事だけは判る。
身体を弄る手は執拗に。
唇を落とす時、喉で笑っている気配も伝わる。
単なる思い込みではないと。

こんな事をしなくても別に拒絶などしないのに。
それとも、何処まで従ってくれるか試しているのやら。


「今日は好きなだけ啼けよ、口は塞がれてないだろ?」

膝を割って、熱の塊が打ち込まれる。
甲高く可愛らしい声など持ち合わせていないのに。
仰け反った喉で、梅丸が圧迫感に呻いた。

尤も、大体は嵐山の要求通り。
快楽より苦悶で歪む様が見たくての行為。
一方的な暴力でもないし、かと云って梅丸も被虐趣味とは少し違う。
身体に強烈な何かを感じて、生きている実感が欲しい。

嵐山の激情が自分だけの物なら、痛みも悪くないと。


自分を抉る刀身と同じような下腹部。
乱雑な手で捕まれると、何となく疚しい気持ちになるけれど。
梅丸も蹂躙を愉しんでいる証。

再び口腔を侵してくる指先。
先程「もう良い」と中断したのは嵐山の癖に。
結局、唇までも封じられてしまった。
梅丸の全てを塞がなくては気が済まないのだろう。

甘い林檎は指から消え去って、今は梅丸の蜜で濡れていた。
やっと血が止まっていた唇の傷に沁みる。

無感情と言われる梅丸も流石に少しだけ複雑な気分。
何も考えないように奉仕の舌を絡ませる。
味なんて碌に知らなくて良いと、ただ従うだけ。

もし口移しで精液を含まされても、飲み干すしかないだろう。
その染められ方は諦めにも近い。


「……ッんぅ……!」
「噛むなよ、ハリネズミより躾悪いな。」

身体の奥で衝撃が一つ。
強かに突き上げられては、思わず指に歯を立てる。
嵐山だって怒ってはいないが。
からかう嘲笑で、微かに空気が震えた。

「……ふっ、間抜け面。」

半開きの口許は梅丸を呆けた表情に見せる。
顎から唾液を垂れ流すままに、身体を支配される姿。

初めてベッドの上でも、やはり優しくはしてもらえず。
確かに手加減など要らないけれど。
誰にも見つからない場所なのだから、いっそ醜態を晒しても構わない。
そんな梅丸を目にするのはただ一人なら。

ああ、そろそろ駄目だ。

夜気を引っ掻いた、最後の唸り。
躾けられた獣になりきって。


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2015.10.12