林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)

テーブルの下は優しい薄闇。
泣きそうになった嵐山の表情も隠してくれる。

指先に唇に、互いの体温を重ねればたちまち火が灯った。
年末からお預けを喰らって溜め込んだ色情。
感情の枷も外れたら、林檎も苺も乱暴に流し込んで席を立つ。

黒塗りのお化け屋敷から見えるお城へ。
あれもまた、大人にならねば行けない場所。



何だかんだでまだ中学生、正月に収入があったお陰で懐は暖かい。
お年玉でラブホテルなんてあまりにも格好悪いけれど。
それから、とても悪い事をしている気分。

18歳未満立ち入り禁止の自動ドア。
お化け屋敷を歩くよりもずっと心臓が忙しない。
静まり返った中は至って普通の廊下、安堵したようなロマンが無いような。
無人のフロントで部屋を選んだらタガが外れる。

先程までの青空なんて別世界。
暗い室内、二人で縺れこんだら此処は夜。


夏でも冷たい手の嵐山に、いつも体温が低い梅丸。
ただ抱き合うだけでは駄目なのだ。
コートに守られていた素肌に触れ、今だけは熱を上げる。

呼吸を奪いながら脱がせ合った。
唇が剥がれるのが惜しくて、息苦しさすら昂ぶる。


一足先に梅丸が裸体を晒したところで広いベッドに倒れた。
嵐山の方はシャツ一枚だけを残して。
薄い身体には根強いコンプレックス、此れが最後の砦。

別に嵐山は自分自身の事が嫌いでなかった。
むしろ賢い頭も綺麗な顔立ちも気に入っているくらい。
ただもっと背があれば、体躯が恵まれていればと。
だからこそ男の色香を持つ梅丸には羨望と嫉妬が入り混じる。

同性愛は"なりたかった理想の姿"を相手に求める事があるらしい。
いざ当て嵌められると、なんて複雑な恋心か。

筋肉で引き締まった細身も今や嵐山の物。
肌の薄い箇所を狙って唇で噛み付いて、赤い花を咲かせる。
爪痕や歯型、こうなっては獣の玩具。
丹念に舐めるのも治療でなくて汗や血を味わう為。



illustration by ういちろさん

そうして汗ばんでは、ワックスの毛先もシーツの上で乱れ始めた。
梅丸は髪色の所為だけでなく、赤の印象が強い。
今日だって黒いスタジャンに合わせてきたのはワイン色のストール。

首から抜き取った後、左の手首を括って手綱にした。
指を握るよりも確かに繋がっていたくて。

「……高校生になったら、ネクタイで縛ってやるよ。」

舌を絡める直前、濡れた声で囁いた。

受験校の制服もストールと同系色のネクタイだった。
紺青のブレザーに合わせ、淡い鼠色のスラックスとスカート。
揃って着られる事を願っての宣言。

どうか此の悪事は秘密のままでありますように。
受かったとしても、それで取り消しになったら笑えやしない。


唾液の所為だけでなく、下腹部の方でも粘着いた水音。
剥き出しの情欲はどちらも蜜を滴らせる。
濡れた切っ先でのキスに、冷えていた頬が思わず火照った。

最初は此れで良いか。

手を添えて擦り付ければ、滑りながらも熱を増す。
溢れて混ざり合う雫。
ただでさえ敏感な部分、光景の生々しさに呼吸が荒くなる。


いつも苦痛に耐える梅丸の姿ばかり欲しがっていたのに。
あの涼しい表情を歪ませたいと。

何処か蕩けた目で見上げられて、嵐山も胸が締め付けられる。
こうした繋がり方も悪くない。
溶けて流れる感覚は同等、それが嬉しかった。

「……ッ……ん!」

今は愛おしさだけに深く浸っていた、お互いに。
加虐も被虐も、二人遊びは後で置いといて。
どうせ時間は夕刻まで自由なのだ。




第一志望、早生学園推薦4人組の合格通知は週末に届いた。

春を待ちわびても、もう少しだけ。
荒れ狂う北風から逃げ隠れて、熱に溺れる冬を愉しんでいたい。


*end


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2016.01.24