林檎に牙を:全5種類
当日編①は此方からどうぞ。
その前にハッピーバースデー(嵐山×梅丸)【交流コラボ】(ういちろさん宅)
本人にはコンプレックスでも、嵐山は確かに少女の愛らしさを持つ。
小さな顔なので、染まった頬は梅丸の手に収まってしまう。
細い茶髪が指に絡まず流れ落ちる。
「可愛い」は機嫌を損ねるだけなので、密かに言葉を呑み込んだ。

不意打ちではあったものの、梅丸から唇を重ねたのはいつ振りか。
普段は嵐山の許しが出ないので夏以来かもしれない。
特別な日のキスは軽くてもたちまち色付く。

吐息は紅を増して、微熱で痺れた。
甘いキスなんて知らなくて良いと思っていたのに。


身体が先走ったのが去年の春。
毎回牙を立てられて、唇の傷に困ったものだった。
あの頃は何を飲み食いしても嵐山の存在を思い出させて。

相変わらずよく噛まれる日々なので、懐かしくもないけれど。
ただ、獰猛になった嵐山の表情は違う。
傷付けている方が心を痛めて、苦み走った憂い。
しかし獣は獣、今や愉悦の微笑を浮かべるばかりである。

梅丸はどちらでも歓迎なので変化も構わない。
最初から受け入れていた痛みだ。


嵐山の口腔に溜まった唾液で、触れたところから濡れ始める。
元々アップルパイに食い付く為に開けたのだ。
そんなに空腹だったのなら、お預けを喰らわせて申し訳ない気分。

息継ぎで唇を離してみれば、間に紡がれる甘い糸。
切れた後も名残惜しげに点々と落ちる。
舌を絡めていた訳でもないのに何だかいやらしい。
お祝いにしては濃くなってしまった。


嵐山が瞼を軽く落として、此方を一瞥。
最中に目を瞑るタイミングを逃していたのに今更の話だ。

「……続きは食べてからな。」

声に照れや強がりは抑えられて、掠れた色香。
子供っぽく怒っても良いのに。
大人ぶっても嵐山の鼓動はまだ速いままだろうに。
梅丸が腕に抱いた時、確かに響いていた。

物には食べ頃と云うものがあるのだ。

梅丸の右手に支えられたアップルパイは焼き立てと同じ熱。
冷めてしまっては勿体ない。
先に味わわなければ、キスから進めず止まって動けず。


「ほら、早く。パイ食べさせてくれるんだろ?」
「ん、遅くなって悪かったんね。」

視線で促されて、スプーンで掬い上げたアイスクリームも。
放ったらかしで柔らかくなっていた真白。
パイで組まれた格子に載せれば、ゆっくりと溶け出す。

バニラとシナモンを匂い立たせて鼻先にも誘惑。
改めて差し出すと、今度こそ嵐山が大きく噛み付いた。

パイが壊れる時は呆気ない。
金色に煮えた林檎と、崩れた端から粉々の欠片。
それから、温まったアイスクリームも。
嵐山の唇から零れる白い水玉。

先程のキスと重なる一幕。
こんなに甘ったるい物ではなかった筈なのに。


どうせ仕返しするくせに、今の嵐山は餌付けされる獣になりきっていた。
多少零れ落ちようが汚れようが意に介さず。
満足そうに頬張って、呑み込んだら再びパイに齧り付く。

美味いかと訊ねたら、此方も見ずに頷いた。
言葉も忘れて梅丸の手から貪る。

普段、箸で食事する時はあんなにも品が良いのに。
無造作な仕草は妙に艶っぽい。
人を寄せ付けない刺々しさとも違う、梅丸にだけ見せる荒々しい一面。


「……ッ……!」

生暖かな痛みに梅丸の喉が小さく詰まる。
最後の一口、とうとう辿り着いた指ごと噛まれた。

前歯で第二間接を押さえ込まれているので動けない。
引き込まれた口腔は形を崩したパイで一杯。
甘い匂いを立てながら頬張られると、本当に嵐山に食べられている錯覚すら。
呑み込まれる瞬間、背筋が震えた。


口が半開きのままでは唾液も零れる。
べとつく唇を拭ってあげたら、再び噛まれた。
今度は戯れ程度に。

「餌付けしてるつもりでも、僕だって言いなりになってばかりじゃないからな。」

吊り目を細めて嵐山が凶暴に笑う。
魅入られているからこそ、こう云う表情が何より可愛い。

アップルパイを平らげたら、次に食われるのは梅丸の番。


*end


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2016.03.18