林檎に牙を:全5種類
*性描写(♂×♂)

鍵を掛けて、閉じ込められて。
逃げる気なんてない事をどうか信じてほしい。


人が寄り付かない旧校舎の最上階、東の果て。
閑散とした男子トイレは学校から忘れ去られたような場所だった。
こんな時間でなくとも誰も来やしない。

奥の個室、閉ざした扉を隔てて痴態。
春からずっと嵐山と梅丸は逢瀬を重ねていた。

週明け三日に渡る期末試験が終わって早々、水曜の午後。
抑圧されるほど解放の時は凶暴になってしまう。
癒えかけた傷に、再び立てられる牙。
幾度も繰り返しては深く刻まれて季節は巡った。


空調管理なんて無縁の古い旧校舎は夏になると湿気が高い。
水気のあまり感じられないトイレも同じく。

まだ肌寒かった頃が最早懐かしい。
もう夏休み前、これから馬鹿みたいに暑くなっていくのだ。
そろそろ此処で交わる熱は息苦しさを伴う。

やがて来る終業式を迎えたら、二学期まで情欲を如何しようか。

旧校舎を出たら、教室でも口すら利かないクラスメイト。
話掛けたところで嵐山は返事もしない。
決して外では何も発展する事の無い関係なのだ。
所詮はそんな脆い繋がりかもしれないと、切なさを混ぜる。


学ランを脱ぎ捨てた季節、男子の制服は至ってシンプル。
薄手のシャツを肩まで剥がされ、スラックスも下着ごと片足から抜かれる。
密室を良い事に梅丸の方はほぼ裸だった。

一方の嵐山はいつも前を緩める程度。
弱みを晒す事を拒むように、頑なに素肌を見せてくれやしない。
それもまた自分達の間に立ち塞がっていた。
対等になるつもりはない、そんな空気で壁を作られる。


洋式の上に梅丸が腰を落として、嵐山より低くなった目線。
見下ろされながらも瞳は離せない。
抱えるように片足を持ち上げられて、剥き出しの性器がキスする。

指を呑み込んだ後でもまだ慣れない身体。
深く突き刺されて、重い痛みが走る。


「……うぅ……ッ!」

食い縛った奥歯から、時折零れる声。

肉体的な痛みで顰め面になっても、梅丸は無感情を保つ。
激情をぶつけてくる嵐山をただ受け止めるだけ。

そうして、更に相手の苛立ちを誘う事も知っている。
元から感受性にも乏しい梅丸は表わし方なんてよく知らない。
ただ、別に変わるつもりもなし。
もっと荒々しい嵐山が見たくて、愛おしい。

此れが梅丸の欲望。
怒らせてでも酷い事をされたかった。


男二人ではどうしても狭くなる個室。
無理な体勢で揺さぶられて、上履きの爪先が扉に届く。
隠れて抱き合うにはいつも余裕なんて無い。
愛やら恋やら口にもせず、衝動ばかりが先走る。

殺し切れない最後の声。

シャツの背中に爪を立てて迎えた沸点。
牙を持たない梅丸にとって、ただ一つの小さな反逆。




抱き合ったままでもいられず、嵐山の肩から脚が下ろされる。
事が終われば何も残らない。
ゴムに吐き出された残骸と、刻まれた傷跡だけ。
溶けそうな熱だって下がる一方。


そんな時、ノックの音は転がった。

「……すみません、宜しいかしら?」

訪問者は突然。
男子トイレに、女の声。


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2016.05.13