林檎に牙を:全5種類
陽が傾きかけた頃、歓楽街は娼婦達が客寄せの歌を舞い上げる。
彼女らが物語の人魚に重ねられる所以。
美しい歌声に惹かれた船人は、人魚に食べられる運命にあるのだが。
心地良くて職場へ向かう足も止まる。
格子の窓辺に立つのは、幼い顔をした黒髪の人魚。

「其処にずっと居られたら営業妨害よ、あと一曲だけだからね、カルロ?」

濡れた詩を奏でていた声で名前を呼ばれて、彼は酷く歓喜した。
投げられた言葉の棘は微かに丸く。
だから多分、僕はリンファさんが好きなんです。
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2012.01.28