林檎に牙を:全5種類
*R指定描写(♂×♀)

相手はまだ秘密。
手首に絡まるのは、幾重にも編まれた鎖や細い金属の輪。
重たげな印象を受けるが手錠などではない。
此れは風雅にとって、既に一体化してしまった物。

骨張った細い指先には色が塗られて尖った爪。
とろりとした光が集まっていて濡れた若葉を思わせる。
其れを支えるのは女の手。
丸い刃に挟まれて金属音が弾け、三日月が散った。


手放しで肌に溺れるには長い爪は少しばかり障害になる。
爪痕が残るくらい目を瞑るとしても、そうもいかないのが性器。
ただでさえ傷付きやすい内側は目で確認できない分だけ怖い。

「破く分には丁度良いんだけどねェ……」

捕らえていようとも、手は二つ。
空いている風雅の片手が不躾にストッキングに包まれた女の脚を爪弾く。
此方は作業で両方が塞がって制する事も出来ず。
確信犯。
好きにさせたままでも内股を指先で押されたところで震えが走る。
抗議しようと開いた艶やかな薄紅。
小さく笑って、声ごと唇で軽く塞いだ。

閉ざされた寝所は古びたランプ一つで黒と橙に染め分けられる。
相手の姿を確認するのに月など要らない。
壁に映る影は二つ。
燈る暖色を素肌に浴びて、軟体動物のように絡まり合う。



此れは過去と云う夢なのだと、静かな声で呟いた。
認識を持つ方の風雅には解っている。
幸福を分け合って彼女と笑う事など、無かったのだから。

同じ場所で目覚めても、其処には独りきり。
終焉が降り掛かったのは疾の昔でも共にした時間は呪いの如く。


此れこそが、彼女が残して行った深い爪痕。
スポンサーサイト

2009.04.15